2023-08-01から1ヶ月間の記事一覧
驚いている正太を見つめながら、 「なにをおっしゃいますか、正太さん。 夢なんかではありませんよ」 と、宙に浮いた雪ダルマの声は落ち着いていました。 「だっ、だって。・・・それに、 どうしてボクの名前しっているの?」 「えっ、えーと、わたし、あな…
寒空のした、学校からの帰り道をいそぐ正太。 歩きながらも、ふと気づくと、鼻先をヒラリと白い ものが過ぎていくのでした。 「わ~~雪だ! やっと、降ってきた」 正太はジャンパーのポケットに両手を入れて、 遠くの空を見上げていました。 「積もったらい…
どんより曇った真冬の朝でした。 正太は、ランドセルをカタカタ鳴らしながら、 ようやく小学校の校門をくぐりました。 そして、校舎に入り、冷え冷えとした廊下を 歩いていくと、朝の教室はワイワイガヤガヤと、 騒がしさでいっぱいでした。 「おい、正太、…
川の神様を目の前にしたクーちゃん。 緊張しながら、 「あの~、これ、川の神様に食べてもらおうと思って」 と、ビクビクしながら水草のサラダを差し出すのでした。 それを見た川の神様はうれしそうに笑いながら、 「おお、これは水草のサラダじゃないか。 …
水の妖精のおねえさんは、 クーちゃんをみてニッコリとしながら、 「あなたね、この水草のサラダを持って川の神様 に差し上げてらっしゃい」 と言うのです。 そう言うと、水の妖精のおねえさんは、 その水草のサラダの上から、なんとお塩をタップリ と振りか…
「あら、あなた、どうしたの。どうして泣いているの」 そのとき目の前に現れたのは、水の妖精のおねえさんでした。 さっきから泣いているクーちゃんの様子をうかがっていた のでしたが、あまりに気になったので声をかけたのでした。 透きとおるような白い輝…
川面にちょっとだけ顔を出して様子をうかがう川の神さま。 怒ったコワイ顔をして川原を見回すと、 小熊が小石を川に向かって放り投げながら、 楽しそうに遊んでいるではありませんか。 「さては、あいつじゃな。よくも、このわしの頭を! よーし、奴を川に引…
ある晴れた日、森に住む小熊のクーちゃんは、 お母さん熊と一緒に大きな川にやってきました。 お母さん熊は、その川で今晩のおかずの魚を捕るつもりです。 のっし、のっしと大きなお母さん熊は、 小熊のクーちゃんを川原に置いて、 川の中に入っていきました…
雨上がりの道はグチャグチャです。 走りにくいったらありません。 それでもタプちゃんのワクワクした気持ちは、 雨上がりの道などに負けていませんでした。 「そうだ。お母さんにも虹を分けてあげよう。 きっと、よろこぶぞ」 タプちゃんは走りました。 大汗…
ここは静かな森の中。 ついさっきまで、激しく降っていた雨が上がり、 お日さまが顔を出していました。 森は明るい日ざしでいっぱいになっていまいた。 いままで木々の間にかくれていた小鳥たちが顔を出しました。 小鳥たちは雨が上がったことを確かめるよう…
プかリプカリと太郎の頭の上に浮かぶ、キレイなユウレイのおねえさん。 上から太郎を見ながら、 「そっか、するとあたし、10歳も年下の彼女になるのか・・。 まあいいわ。いじめないでね、年下のあたしを・・」 自分の頭の上からユウレイのおねえさんに見…
小学校のグランド。せっせと大きな雪だるまをつくっていた太郎と正夫。 と、どこからともなく握りこぶしぐらいの雪のかたまりが飛んできて、 太郎の背中に当たった。 「うえっ、やられた」 と言いながら、後ろを振り返る太郎。 だが、いくら見渡しても誰もい…
つぎの朝、昨夜の大雪がウソのように晴れ渡っていた。 お日様が顔を出してキラキラしている。 一面に積もった雪がお日様を照り返してまぶしい。 いきなり家から出ると、慣れるまで眼を開いているのが、 ちょっとの間大変なくらいである。 太郎は、小学校へ行…
夜の街を歩く太郎とユウレイ。ふと、ユウレイが太郎を見て、 「風邪、ひかないでね」 と言って、ちょっと心配そうに微笑む。 「うん、だいじょうぶ」 腕を組んで背中を丸めた太郎は、寒くてふるえながら小さい声で答えた。 太郎のちょっと後をスス―とついて…
寒そうな顔をした父さん、 「雪、まだ降ってるのか?」 と言う。 「うん、けっこう積もっているよ」 と、ボクが答える。 「そうか、どうりで冷えると思ったよ。 しかし寒いのに物好きだな、おまえ。母さんが知ったら、またツノ出すぞ」 「平気だよ。それに友…
太郎は、壁にぶつけた頭の後ろを手でなでながら、 痛い頭でユウレイの様子を見ていた。 やっぱり恐い。しかし、それだけでもない。 太郎は、なぜだかユウレイのおねえさんが、 まったくの他人には思えなくなっていたのだ。 それどころか、 なぜだかいつかど…
しんみりしているユウレイを見て太郎は、 「ボクでごめんね。・・ボクのせいじゃあないけど」 と、太郎なりに、やさしく言ってみた。 「そうね。わたし、もう一度がんばって、よしおさんを探してみるわ。 あなたには迷惑かけたわ。ごめんね。じゃあね」 と言…
じっと太郎を見つめるユウレイ。下を向き、 「でもねー、やっぱり、そのー」 と、なぜか急にモジモジとしはじめた。 「おねえさん、ユウレイなんだから、ヒョイと会いにいけばいいのに」 「えっー、これからっー。だってもう夜も遅いしねー」 「あのぉー、ボ…
「その時ね、ちょうど雪が降っていたの。だからよしおさんったら、 君のことはいつまでも忘れないよ。雪が降ったら、 君が会いに来てくれたのだって思うよって」 「それで、ユウレイのおねえさん、出て来たわけ?」 「そぉーなのよ。よしおさんの気持ちに、…
とたんに、ジィッと太郎をにらむユウレイ。 「あんたね。ユウレイって、怒らすと恐いのよ。ほんとだからね」 と、ユウレイが言う。 太郎をにらんだユウレイの顔が、太郎はほんとに恐いと思った。 「ごめんなさい」 なにせ相手はユウレイだ。この世の者ではな…
太郎の怖がりぶりを見て、あわてたユウレイ。 「嘘よ、嘘、嘘。今時ね、そんなのいないって。安心しなさい」 と、言って安心させようとする。 「だからさー、なんでここにいるの?」 「わたし、間違えちゃったのよ。 てっきりこの家だと思ったんだけどなー。…
「あっ、あのー。ユウレイさんって、本当に化けて出るんですね。ボク、はじめてだ」 太郎は恐る恐る、でもしげしげと、ユウレイをながめていた。 「化けて出るって? あなた、テレビの見過ぎじゃないの」 と、ユウレイがあきれた顔をする。 「だって、現にい…
全身でユウレイが怖い太郎。涙と鼻水で顔をくちゃくちゃにしながら、 “ボクは父さんと母さんの太郎だい”と、心の中で言い返した。 「雪が降ったら、いつも君を思い出すよってあなた言ったじゃない。だからわたし・・。ひどいわ、わたしを忘れるなんて・・」 …
蒲団をかぶったまま、ブルブルと震えている太郎。 「おっ、お化けだぁー。お化けが出たぁー」 と言ったつもりだが、とにかく恐くて、 ふるえるやら口は乾くやらで、ほとんど声にならない。 “恐がらないで”と言われても、やっぱり恐い。 太郎は、蒲団の中でし…
降る雪で外はもやって見える。 家々の屋根が、白くくすんだ灰色の様になっている。 立ち木のこずえにも、雪が積もっている。 のっぽの電柱が雪の帽子をかぶっている。 ところどころの電線にもやっぱり雪が乗っている。 ずっと見渡すと、あたり一面雪でいっぱ…
雪の降るしずかな夜だった。 太郎はベッドに入ったまま、パッチリと目を開けていた。 なぜか今夜にかぎって、ぜんぜん眠れない。頭もすっきりとしている。 さっきからずっとそうだが、部屋の小さな電球が眼について離れない。 おかげでうっすらとだが、部屋…
要するに、ボクと姉、どっちが上でどっちが下か。 自分も含めて、犬から見た縦の順位に従って行動する、 それが犬というものなのです。 これは、先祖であるオオカミたちが群れて生活していた頃の名残です。 1つの群には徹底した縦社会が構築されているので…