間違えたユウレイ5 - 化けて出る
「あっ、あのー。ユウレイさんって、本当に化けて出るんですね。ボク、はじめてだ」
太郎は恐る恐る、でもしげしげと、ユウレイをながめていた。
「化けて出るって? あなた、テレビの見過ぎじゃないの」
と、ユウレイがあきれた顔をする。
「だって、現にいま、出てるもんね」
「あなたに化けて出てもしょうがないでしょう。お岩さんじゃあるまいし」
と、ユウレイが呆れ顔をする。
「ほんとう?」
「ほんとうよ。今時はね、化けて出るなんて、そんな古くさいことしないのよ」
「それじゃあ、なんで、ここにいるの?」
太郎は、蒲団に半分顔をかくしながら、恐々とユウレイを見つめていた。
「そんなに恐がらないでよ」
「なにせ、はじめてだから」
「わたしって、めずらしいと思う?」
「うん! めずらしい。めちゃくちゃに、とんでもなく、めずらしいと、ボクは思う」
「やっぱり、そうかしら」
「そうだよ。だいたい、いきなり知らない人のところに化けて出るユウレイなんて、ボクはじめてだ」
「だってあなた、他のユウレイ知ってるの」
「知らないけどさ」
「ほらごらんなさい。わたしみたいなユウレイがいたって、いいじゃない。それにね、あなた今、すっごく、貴重な体験をしていると思わない。めったに無いわよ、ユウレイ
に会えるなんて。よかったね。わたしが、化けて出てあげて」
と言って、ユウレイがニンマリと笑う。
「あっー。やっぱり、化けて出たんだ。ボク、おねえさんに何かしたでしょうか?」
太郎はあわてて蒲団にもぐりこむ。と、またまた、ブルブルとふるえだした。
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