大人の童話館

自作の創作童話やエッセイなどを投稿していきます。

2、七色の虹と子ぎつねタプちゃん - 雨上がりの道でも走り続ける

 

雨上がりの道はグチャグチャです。

走りにくいったらありません。

 

それでもタプちゃんのワクワクした気持ちは、

雨上がりの道などに負けていませんでした。

 

「そうだ。お母さんにも虹を分けてあげよう。

きっと、よろこぶぞ」

 

タプちゃんは走りました。

大汗をかきながら走りました。

 

雨上がりの道をあまりに急いで走ったので、

もうクタクタでです。

 

ふと立ち止まり、肩で息をしながらお空を見上げたました。

するとどうでしょう。あんなに大きかった虹が、

まるでネズミにかじられたように、

下の方から消え始めているのです。

 

 

「あ、あ~、大変だ」

それに、虹の色がさっきよりもうすくなっているようです。

「どうしちゃったんだ?」        

                                         

タプちゃんは心配になってきました。

そしてまた、あわてて走りだしていました。

 

急ぎに急いだタプちゃん。

とうとう、雨上がりの道の水たまりに足をとられて、

ステ~んといきおいよく転んでしましました。

 

大きな木のかげでそれを見ていたお母さんギツネは、

あわててタプちゃんを助けようとしました。

 

でも、ふと考えてやめました。

そして、

“タプちゃん、がんばって”と、

心の中で応援したのでした。

 

「痛いよ~痛いよ~」

 

それでもタプちゃんは、

「にじ、にじ・・」

と云いながらおき上がり、

痛い足を引きずるようにして走っていきました。

 

タプちゃんは、その後も何度も何度も転びました。

だから、もうドロだらけです。

 

そして、しばらくするととうとう虹は、

あと形もなく消えてしまいました。

 

タプちゃんは、虹をつかまえることができませんでした。

しょんぼりとしているタプちゃん。

 

そんなタプちゃんの前に、

お母さんギツネはニコニコしながら現れて、

「おめでとう、タプちゃん」

と、大きな声で云うのです。

 

キョトンとしているタプちゃんに、

お母さんギツネは云いました。

「おめでとうタプちゃん。

あなたは今日、虹をつかまえたのですよ。

心の中の虹をね。だって、あきらめなかったのだもの。

がんばったね、タプちゃん。えらかったね」

 

シクシクと泣いているタプちゃん。

目に涙がいっぱいです。

 

でもお母さんギツネの顔を見ながら、

ニッコリとうなずくタプちゃんなのでした。

 

おわり

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