大人の童話館

自作の創作童話やエッセイなどを投稿していきます。

黒ネコニャン太の物語17 - ナンバーワン女性

 

ミケ子に想いを寄せる怪獣のポーチ。怪獣のくせにと思いつつも、ポーチの話に耳を傾ける

ニャン太。

「それで?」

と、鼻息の荒いポーチをあきれ顔で見つめるニャン太。

「オレもご主人みたいにするのさ。背広着て、ネクタイ首にしめて、朝、家を出るんだ。すると、お金がもうかって、それで、ミケ子と“しょたい”ってやつをもつんだ」

 

「ご主人は、背広着てネクタイしめて、ええと、カバンもって、どこへ行ってるんだろ」

「会社ってえとこだそうだ」

「どこにあるの」

「知るか、そんなこと」

 

「それじゃあ、困るだろう」

「だから、お前に相談してる。友達だろ、オレとお前は」

「なるほど、そういうわけか」

うなずくニャン太。でもやっぱり、チンプンカンプンであることには違いない。

 

ミケ子なら、ニャン太も知っている。怪獣のポーチが参るのも無理はない。“美しい女性”として、この辺りでは評判のネコである。

 

でも、その評判、本当にそうだろうか、とニャン太は思う。だって、顔のつくり、毛並み、体形にしたって、ミケ子なんぞよりも、“美しい女性猫”は、いっぱいいる、と思うのだ。なのに、それらの“美しいネコ女性猫”たちを差し置いて、ミケ子がナンバーワンに収まっている。そこがニャン太には、どうにも不思議でならないのだ。 

 

「ミケ子って、そんなにいいかな? 他にも美しい女性猫はいくらでもいると思うが。ミケ子だけが特別というわけでもないだろう」

と言うと、ペロペロと前足をなめるニャン太。半分はどうでもいいと思っている。

「なにっ」

と、怒った顔をする怪獣のポーチ。

 

 

いきなりお日様が陰ったかと思うと、大きな雲の群れが日差しを遮っていた。ビューと風が吹いて冬の寒さを伝えていた。ほうきのようなポーチの尻尾がユサユサと揺れて、ニャン太は身体をブルンとさせた。

 

「だってっ・・」

と、ニャン太が口を開こうとするが、ポーチがそれを許さない。

「だってじゃあない! お前、ミケ子の“魅力”ってやつがわからないのか」 

と、怪獣が長くて黒い髭をヒクヒクさせながら吠える。

 

「“魅力”って、なにさ。魅力的な女性猫なら他にいくらでもいるじゃないか」

「あきれたやつだな」

と、ポーチ。ヒクヒクさせた鼻に加えて、大きな目をさらに大きく見開いてニャン太を見据える。

 

「いいか、あいつの、“ニャーーン”と鳴く声を聞いてみろ。あの、こちらの心にまで透きとおってくるような、美しい声を。あの声を聞くだけでも、オレは幸せになっちまう」

「ほかの女性猫と、どう違うのさ?」

 

「わからん奴だな。よし、くわしく教えてやるからよく聞けよ」

「うん」

「他の女性猫たちの“ニャーン”は、ただのニャーンだ。ミケ子の“ニャーン”には、輝きがある。バラ色のような美しさがある。うっとりするような世界が目の前に広がる」

熱心に話す怪獣のポーチ。ポカーンと口を開けたまま、それを聞くニャン太。そんなニャン太を尻目に、またポーチが口を開く。

 

「道で出会った時、コクンとうなずいたり、話しの最中に相づちを打ったりするときの、しぐさ。品の良さがにじみ出て、香しい匂いを辺りに放ちながら歩く姿は、まるで女王様さ。つまり、ミケ子は十分に魅力的な女性猫ナンバーワンなのさ」

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