黒ネコニャン太の物語10 – やる気満々
屋根から降りたニャン太。勇気を身体にみなぎらせ、道の隅っこを歩いて行った。
ようやく、シロのいる家が見えてきた。ニャン太は、ジロリとにらんだ。ヒゲがピクピクする。
やる気満々だ。見ると確かに、庭にシロがいる。クサリにつながれたまま、丸くなって気持ちよさそうに寝ている。
(どうやら敵はお昼寝だ。いい気なもんだ)
足音をしのばせた。気が引き締まる。やけに胸の中がさわがしい。ふと立ち止まり、ちょっと道に腰を下ろす。ペロペロとからだをなめて、緊張をほぐした。でもすぐに顔を上げた。
道の向こうにしロがいる。フーッと凄んでみせたが、相手は少しも気づかない。
「ふん、めでたいやつだ」
ニャン太は、蚊の鳴くような声でののしった。
ドキドキしながら、ゆっくりと、静かに進んだ。とうとう、敵の目ヤニが見える所までやってきた。まじまじとながめた。こんなに近くで見るのは初めてだ。
シロは、それほど大きな犬じゃない。きっと雑種に違いない。それでも、憎ったらしい顔は変らない。
(こいつ、絶対に利口じゃあないな)
ヒクヒクとニャン太の鼻が動いた。
(敵は、安眠をむさぼっている。やるなら、今だ!奇襲攻撃をかけて驚かしてやろうか。
なに、卑怯だって? かまうものか、どうせ相手はシロだ。いきなり飛びかかって、鼻でもひっかいてやればいいんだが・・・)
ニャン太は考えていた。それで迷った。やけにからだが固くて、動きにくい。けっして恐いんじゃない、と自分では思っている。
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