大人の童話館

自作の創作童話やエッセイなどを投稿していきます。

間違えたユウレイ13- 夜の街を歩く太郎とユウレイ

 

夜の街を歩く太郎とユウレイ。ふと、ユウレイが太郎を見て、

「風邪、ひかないでね」

と言って、ちょっと心配そうに微笑む。

 

「うん、だいじょうぶ」

腕を組んで背中を丸めた太郎は、寒くてふるえながら小さい声で答えた。

 

太郎のちょっと後をスス―とついていくユウレイ。

 

しばらくすると何かを悟ったように、太郎の後ろ姿をじっと見つめながら、

「よっ、よしおさん、あなた・・」

と、小さな声でつぶやいていた。

 

 

黙ったまま前を歩く太郎。そんな太郎に向かってユウレイは、

「もう、これぐらいにしましょう」

と声をかけた。なぜかユウレイなのに、顔がポッと紅色に輝いている。

「まだ、平気だよ」

「ううん、だめよ。だってあなた、生身の身体なんだからね」

と言うユウレイ。

 

「まだ、見つかってないよ」

と、太郎。

「ふふん、いいのよ。ありがと、太郎君。もう、大丈夫なの」

「いいよ」

鼻水をすすりながら太郎が言った。

 

ユウレイがまじまじと、太郎の顔を見ている。

 

うるんだ瞳で太郎を見つめて、ニコニコしている。

辺りはサラサラと降る雪に包まれていた。

 

太郎とユウレイの上にも雪が降り注いでいた。

そんな中、夜の街を歩く二人。

でも、ユウレイはなぜかとっても幸せそうだ。

 

「なーに?」

と、太郎が聞く。

 

「なんでもないわ・・」

と、ユウレイはニッコリしながら横に首をふった。

 

人気の無い真夜中の街、相変わらず大粒の雪は、

まっ黒な空からサラサラと途切れなく落ちてくる。

 

誰もいない通りは、それだけで不気味な感じがする。

そんななか、二人だけで雪の夜の街を歩く太郎とユウレイ。

 

太郎は思わず首をすくめて、ブルッとした。

「なんか、お化けでも、出そうだね」

 

「ユウレイなら出てるわよ」

と、ユウレイが言う。

 

「そうだった。ボク、ユウレイと一緒だったんだ」

のけぞるようにしながら、太郎がユウレイに言う。

 

「なによっ! 男の子でしょう。しっかりしなさいよ」

ユウレイが笑いながら、太郎の肩をポンと叩く。

 

すると、太郎の手を取って、

「本当にありがとう。わたし、君のこといつまでも忘れないからね」

と言った。

「うっ、うーん。うれしいような、恐いような。

ボクもおねえさんのこと、いつまでも忘れないからね」

 

太郎は、ユウレイのおねえさんに手を取られたまま、

照れくさそうに、もじもじとしていた。

 

その手はやっぱり冷たい。ユウレイだから仕方ないと思う。

でも白くてきれいな手だった。それに冷たいのになぜか、

温か味のある手でもあった。

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