黒ネコニャン太の物語9 - 心の中のライオン
ニャン太とカースケ、友達ではある。しかし、この二人の、いや一匹と一羽のどこまでもかみ合わない会話が続く。
「シンセキなんだよ。なっ、だからボクがライオンに似ていたって、おかしくないじゃないか」
「でっ、でもぉー・・・、だってぇー」
「でもぉーって、なんだい! だってぇーってなんだい!」
「ニャン太君は、りっぱなネコなんですから、なにもライオンのまねなんかすることないじゃないですか。それって、おかしくないですかぁー」
「わからないカラスだなー」
またまたあきれ顔のニャン太。
「いいかい、ネコとライオンはシ・ン・セ・キなんだよ。だから、ボクだってきっと、ものすごく強いのかもしれないじゃないか」
ニャン太の鼻息が荒い。カースケはあきれた。黒いくちばしが、ポカンと開いたまま動かなかった。こういう相手には、下手に逆らうべきでないと思った。
大きな翼を広げて舞い上がったカースケは、西の空へ飛んでいった。こういうネコとはかかわらないようにしようと思って、カーと一声、大きく鳴いた。
ひと休みした屋根の上で、ネコのニャン太はライオンになった。身体はネコだ。でも心はライオンだ。これ以上の満足はない。
ニャン太は元気よく屋根から下りた。そうして、力強く歩いていった。
そろそろ三丁目に近づいた。いよいよシロと対決だ。ニャン太は、ブルンと震えた。もちろん、武者震いだ。けっして恐くて震えたのじゃあない。
そこがいつもと違う。ライオンのシンセキだという自信がある。自信が力を生み、力がまた自信を生んだ。
のっしのっしと力強く歩いた。じっと正面を見つめる眼つきが鋭い。肩から腰にかけての筋肉が、静かに波打っている。
ピンと張ったヒゲから、ユラユラ揺れるシッポの先まで、勇気がいっぱいだ。