間違えたユウレイ4 - ユウレイが怖い
全身でユウレイが怖い太郎。涙と鼻水で顔をくちゃくちゃにしながら、
“ボクは父さんと母さんの太郎だい”と、心の中で言い返した。
「雪が降ったら、いつも君を思い出すよってあなた言ったじゃない。だからわたし・・。ひどいわ、わたしを忘れるなんて・・」
そう言うと今度は、雪子というユウレイのほうが、しくしくと泣き出してしまった。
太郎は困った。ただ困ってみても、やっぱりユウレイが怖い。
だから、どうしたらいいのかわからなかった。
いきなり太郎の部屋に出て来られて、よしおさんに間違えられて、
恐いやら、驚いたやら。そうかと思うと、今度は、
そのユウレイの方が悲しそうに泣いている。
ただ、困ってみると、恐いのがほんの少し減っている自分に気がついた。
「だからさぁ、ボクはね」
と、太郎が言いかけると、ユウレイがいきなり顔を近づけてくる。そして、じぃっと、太郎の顔を見つめている。
「あれっー? あなた、だあれ?」
と、いまさらながらユウレイが言う。
ただ、どうにもユウレイが怖い太郎。恐る恐る、
「ボク、太郎です。さっきから言ってるでしょう」
と、蚊の鳴くような声で応えた。
「太郎君なの? じゃ、よしおさんは?」
「知らないよ、そんな人」
「えっー、せっかく遠くから来たのに・・」
「いーです、いーです、来なくて。ボク、怖いですから」
太郎は、大きく横に首を振りながら、キッパリと言った。
「まー、子どもね。たかがユウレイが怖いだなんて。それでも男の子なの。あなた、いくつ?」
「小学四年生の十さいです」
「小学四年生の十さいにもなって、まだユウレイが怖いの」
「そんなこと言ったって、恐いよー」
太郎が口をとがらせて言う。
「ハハハッ。まっ、甘えんぼさんねぇ」
ついさっきまで、しくしく泣いていたユウレイが、
もう大きな口を開けて笑っている。