6、黒猫ニャン太の物語 - ライオンの姿が頭に浮かぶ
(ライオンは何を食べるんだろう。魚なんか好きな? 一度、サンマでもくわえて、あいさつしたいもんだ)
勢いよくニャン太郎の心にライオンが戻ってきた。と、やっぱりうきうきしてくる、ともあれ嬉しさがこみ上げてくる。その時、ニャン太の頭にはライオンの姿がくっきりと頭に浮かんでいた。
力強くてしっかりした足腰。ガオォォーと吠える時の勇ましい顔つき。たてがみをなびかせて走る雄姿。どこをとっても、ほれぼれとする。恐いものなんか、なんにもないって感じだ。犬のシロなんか、問題じゃあない。
「おまえ、ライオンの親戚なんだぞ」
と、タケシはいった。その声が何度もニャン太郎の耳の奥でこだまする。
(そうだ! シ、ン、セ、キ、なんだ!)
そう思うと熱いものがこみ上げてくる。頭がポーとする。もし顔一面に生えている毛をそり落としたら、きっと真っ赤になっているのに違いない。顔に出さないのが、われらネコ族なんだが、かってに鼻が高くなる。
(ボクだって・・・・!)
ニャン太郎は立ち上がった。熱い血潮がかけめぐって、力がみなぎってくるようだ。
その時、ふと気がついた。
(ボクって、ライオンみたいだ)
こうして四本の足をしっかりと踏ん張って立っている姿が、われながらたくましい。ライオンにそっくりだ。
(だって、シンセキ、なんだからなぁー)
じつにいい気分だ。得意な顔が、すがすがしく輝いている。それに、なんとなくどっしりとして、重々しい強そうな自分を感じる。と、同時にワクワクした気持ちが湧いてくる。