4、黒ネコニャン太の物語り - イヤな気持ちになった
(シロのやつめ)
ニャン太の頭にシロの姿が浮かんだ。と、イヤな気持ちになった。
不思議なことに、いったん頭にイヤな気持ちが浮かぶと、それがしつこくこびり付いてくる。
こにイヤな気持ちは、なぜかどこまでも追いかけてきて、ニャン太を増々、イヤな気持ちにさせるのだ。
そのイヤな気持ちの原因は、シロ犬のシロである。シロが三丁目に引っ越してきたのは、まだごく最近のことらしい。
確かにちょっと前まで、ニャン太の縄張りには、犬なんてどこにもいなかったのだ。必ずさけて、安心できる所を縄張りにするからだ。
ところがいた。引っ越してきた。
もう、ちょっと前のことである。
その日は運が悪かった。クサリが外れていたのか、ニャン太めがけて、シロが庭から飛び出してきたのだった。
ワンワンとけたたましいやつ。それが白犬のシロだった。
びっくりしたのなんのって。恐ろしいのなんのって。もちろん、あわてて逃げた。すばやくブロック屏に駆け上がった。
けれどもそのすぐ下では、追いかけてきたシロがワンワン吠えている。
しつこいやつだ。嫌なやつだ。
ブロック屏の上のニャン太は、フーッと、凄んで見せた。
でも、さすがに白犬のシロ。怯みもしなかった。それだけじゃあなかった。ますます恐い顔になった。
ここで会ったが百年目って顔に、恨みやつらみの憎しみさえあらわれている。
もちろんニャン太には、シロに憎まれる覚えなんかない。いつまでもこんな顔につき合っているなんて、まっぴらごめん。
そこはやっぱりネコだけに、ニャン太は、さっさと逃げていった。
それからというもの、黒ネコのニャン太は、白犬のシロが大きらいになった。