大人の童話館

自作の創作童話やエッセイなどを投稿していきます。

1、のろまのドン太はカタツムリ - 明るい森の道で



 

 

タツムリのドン太は、森の道をゆっくりと

歩いていった。

 

なにか目的があるわけでもなかった。

もちろん、なにか必要がるというわけ

でもない。

 

昨夜の一晩中降った雨のせいで、

森の道はしっとりと濡れている。

そんな道を、ドン太は、ただゆっくり

と歩きたかっただけだ。

 

朝の空気が爽やかだ。緑の木々が清々

しく、その匂いも心地よかった。

 

ゆっくりとだがこうして歩いていること、

動いていること、それ自体が生きてい

ることを実感させられるのだ。

 

ドン太は進む。前へと進む。まぶしい

朝の光をその身に受けながら、前へと

歩いて行った。

 

頭の上を見ると、新緑の葉がいっぱい

茂っていた。

 

葉と葉の隙間から朝日差し込んで、

そよそよと風が吹くとキラキラと日差し

た揺れ動いた。

 

そんな光景も、なぜかドン太の気持ちを

晴れ晴れとさせてくれる。

 

ふとドン太が気づくと、セカセカと忙しな

い足取りで、後ろから誰かが近づいてくる。

 

ドン太が振り返ると、それは黒アリだった。

 

黒アリは、ぬかるんだ道にもめげずに、

あっという間にドン太の横に並んだ。

そして、ニッと笑う。

つられてドン太も、ニッと笑う。

 

黒アリがじっとドン太を見つめている。

なんだとばかりにドン太も見返す。

 

と、黒アリは、プイと前を向くと、

ドン太を置いて行ってしまった。

 

セカセカと忙しない風にように去っていく

黒アリ。

その背中を見守るドン太。

 

少し行くと、黒アリは急にその歩みを止めた。

そして、グルリと顔を後ろのドン太に向けると、

「のろまめ!」と言う。

「せっかちめ!」と、ドン太も言い返す。

 

睨み合うカタツムリと黒アリ。

「のろま、日が暮れるぞ。」

「せっかちめ、どこかにぶつかってケガするな。」

罵り合う二匹の間から火花が飛ぶ。

空にはもっくりとした雲が流れてきて、朝の光を

遮り、一気に暗くなった。

ヒューと風が吹き抜け、木々の葉っぱがザワザワと

騒ぎだした。

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