大人の童話館

自作の創作童話やエッセイなどを投稿していきます。

黒ネコニャン太の物語13 - 縄張りを歩く猫



 

自分の縄張りを歩くニャン太。あちこち鼻を近づける。くっつける。クンクンやってニオイを確かめる。すりすりと下あごをこすりつけ、安心のニオイをかいで満足する。自分の縄張りはあくまで守る。ニャン太は、大真面目だ。

 

ただしこれからは、その縄張りを少しだけ減らすことになりそうだ。なぜって、いきなり縄張りに越してきた犬のシロは、やっぱり怖い奴だ。残念だが奴には勝てそうにない。ならばこっちから避けるしかないからだ。   

                 

大きな石垣の家が見えた。立派な家だ。何度も前を通ったので、よく知っている。ゴツゴツした石垣に沿っていくと、曲がり角の石が、道にはみ出している。

 

「おやっ?」

と、いってニャン太は立ち止まった。鼻を近づけてクンクンやった。初めてのニオイだ。一大事件だ。さっそくからだ中を何度もこすりつけて、ニオイをつけた。もう一度鼻をあてた。今度は自分のニオイだ。ニャン太は、ホッとした。

 

ニャン太は歩いていった。向こうから知った顔がくる。うれしい顔だ。ニャン太のシッポが、まっすぐにピーンと立って、ブルブルとふるえた。

 

おとなりのおばあさんだ。いつもニャン太のことを“ニャンちゃん、ニャンちゃん”という。頭をなででくれたり、抱っこしてくれたり、前足を取って、人間の赤ちゃんをあやすようにして、遊んでくれたりもする。おやつだってくれることもある。

 

そんなおばあさんだが、ときには面倒になることもある。頭を撫でてくれるのは嬉しいが、気分の乗らないときもあるし、それにこっちにだって他にやることがある。

 

そんな時は、そこはやっぱりネコだけに、ニャン太は知らんぷりして行ってしまう。

「ニャンちゃん、お散歩かい?」

おばあさんが、ニッコリしている。

 

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