1、雪だるまのオバケ - 雪遊びができない
どんより曇った真冬の朝でした。
正太は、ランドセルをカタカタ鳴らしながら、
ようやく小学校の校門をくぐりました。
そして、校舎に入り、冷え冷えとした廊下を
歩いていくと、朝の教室はワイワイガヤガヤと、
騒がしさでいっぱいでした。
「おい、正太、聞いたか?」
友だちのたかしが、席についた正太に走り寄って来て、
大きな声で話かけてきました。
「何をだ?」
正太がキョトンとしていると、
「朝のテレビ、見なかったのか?
今日、昼ごろから雪が降るんだってよ」
と、たかしが元気いっぱいに言います。
「ほんとか? ほんとに降るのか?」
「ああ、そうらしい。やったな!」
頬っぺたを赤くした正太とたかしは、
顔を見合ってニコニコしていました。
「でもよ~」
正太がちょっと顔をしかめています。
「なんだ?」
「雪ふったら、寒くなるんだろうな」
と、ちょっとだけ正太が眉をしかめます。
「ハハハッ、がまんしろ。雪だるまだって作れるんだぞ」
「うん、そうだな。雪合戦をしたり、
カンタンなソリをつくって遊ぶことだってできるな」
「その通り、たくさん降って積もればいいなぁ~」
と、すでに雪がいっぱいの景色を思い浮かべるたかしでした。
そんなたかしが正太の肩をポンと叩くと、
正太はニッコリとして頷くのでした。
でも、その日は、お昼が過ぎても、
下校の時間になっても、
とうとう雪は降りませんでした。
相変わらず、鉛色した分厚い雪雲が、
どんよりと不気味に空をふさいでいるだけでした。
そおのおかげで、まだ昼間だというのに、
辺りはもう薄暗くなってしまいました。
正太はつまらなそうな顔をして、
帰り道を歩いていました。
いつもの道なのに、なぜかいつもとは違う。
そんな分けもわからない不安のようなものが、
正太の心をとらえていました。
ふと、辺りを見回す正太。
近くの公園に一本だけ生えているイチョウの木が、
寒空に震えるように立っていました。
その木の枝が、まるで何かに怯えるように、
冷たい風に揺れていました。