黒ネコニャン太の物語、7 - 心に宿るライオン
(シロがなんだい!)
心の中のライオンがガォォ~と吠えた。と、胸のモヤモヤをどこかに追いはらってしまった。やっぱりウキウキしてきた、ワクワクしてきた。
ニャン太の心にもう恐いものなんてなかった。
大満足しているニャン太の後ろで、バサバサと羽ばたく音がする。ニャン太はふり返った。晴れた冬の空から下りてきたのは、カラスのカースケだった。
ニャン太の友達だった。でも、あまり好きじゃあなかった。
「やあ、ごきげんよう」
と、言いながら、カースケが屋根の上を歩いてくる。
二本の細い足が真っ黒なからだを支えて、かわるがわる器用に動く。ちょっと見ると、ニャン太のしのび足のようだ。その歩き方が、ニャン太にはなんとなくキザに見えた。
(相変わらず、キザなカラスだ)
カースケを見つめていたニャン太。きちんとすわり直すと、精一杯胸を張った。
「おい!おまえ、ボクが何者だと思う?」
「へっ?何ですって?」
カースケは丸い頭を傾けた。二つの黒い眼が、ぼんやりとニャン太を見つめ返す。
冷たい風がピューと吹いて屋根を襲った。ニャン太はブルッとからだを震わせた。寒くなった。サンマ雲がいくつか寄り合い形を変えた。
それがふくらんできて、とうとうお日様を隠してしまった。
「だから、何者だと思うのかってば?」
ビンビンとヒゲを震わせながら、ニャン太は大きな声で言った。
「ネコだと思いますが」
「だってボクはネコだよ。それじゃダメだ。よく見ろよ」