黒ネコニャン太の物語15 - 友達同士
人間の笑い顔について考えたところで、われらネコ族はというと、これはなかなか難しいと、ニャン太は考える。顔に出さないのがわれらネコ族だからである。
それでも、ネコにだって人間なみに心はある。いや、手軽に顔になんぞ出さない分、胸におさえているものは、人間以上かもしれない。
居心地のいいおばあさんの抱っこ。そこから降りると、ニャン太はいつもの公園へと向った。
「おーい、ニャン太―」
いつもの公園の、ちょうど入り口あたりにポチがいる。
ポチといっても、あの嫌な犬族じゅあない。りっぱなネコである。本当はポーチという。変な名前だとニャン太は思う。もっともニャン太は、ポチとは呼ばないし、ましてや“ポーチ”なんて、長ったらしくて、面倒だと思っている。
「怪獣!」
と、ニャン太は呼ぶ。
“怪獣”は、血統書つきの、買うとかなりのお値段が張るネコである。それだけに、ニャン太とは少々毛並みが違う。ちょっとムラサキがかった毛が、ニャン太の二倍から三倍ほども長い。フサフサとしている。フサフサした毛が全身に行きわたっている。だから、顔まで毛でいっぱいで、その毛が顔の横にまではみ出している。
そして、その顔が、以前たけしと一緒に見たテレビに出てくる怪獣に似ている、とニャン太は思うのだ。怪獣がどこに住んでいるのか、いつごろからこの辺りにいたのか、ニャン太は知らない。知りたいとも思わない。ふと気がつくとそこにいて、友達になっていた。
「おい! そう呼ぶの、やめろよ!」
と、怪獣のポーチが言う。
「そうか、わかった」
と、素直なニャン太。
「今日はやけに早いな、怪獣!」
「だからっ、それ、やめろって・・・。おまえ、話し聞いてないだろ」
怪獣が、ムッとしている。
「あのなぁ、恋するネコに,“怪獣”なんていっていいのかよー」
「だれが、恋するネコなんだい?」
「オレ様だ、オレ!」
心持ち鼻をもち上げた怪獣のポーチ。照れながらいばっている。たとえネコであっても、そこはやっぱり友達同士。浮いた話の一つぐらは黙ってきいてやる、とニャン太は思っている。