1、黒ネコニャン太の物語り - 寒い冬の夜はお家でゴロン
寒い冬の夜だった。黒ネコのニャン太は、とっても暖かいお家でゴロンとひっくり返っていた。
ついさっきまで、お家のキッチンで、美味しいキャットフードをモグモグさせていた。
さて、この後、普段ならお散歩ということになるのだが・・。ここでちょっと考える。
というのも、このところ急に冷えこんできた。外は身を切るように、ピューピュー木枯らしが吹いている。
大変に寒い冬の夜だ。そういうことで、今夜のお散歩は止めにした。
こんな日は、やっぱり家の中がいい。暖かいお家でゴロンがいいに決まっている。
そんなことを思いながら、テレビのある部屋へと移動したニャン太。と、ゴロンと寝転び、ゆっくりと手足を伸ばした。口をいっぱいに開けてあくびをする。
と、眼に涙がたまった。寒い冬の夜は、お家でこうしてゴロンが一番だ。ニャン太は、そんなことを頭の中で思ってゆっくりしていた。
すると、そこへいきなり、ドタンドタン足音を立てて、タケシが部屋に入ってきた。タケシはこの家の子で、小学五年生の男の子だ。
ゆっくり頭を持ち上げたニャン太。真ん丸い眼でタケシを見上げた。ヒョイとシッポを軽くふった。いつものネコのあいさつだった。
けれどもタケシは、ニャン太などおかまいなしにテレビをつけて、ニャン太の横にやっぱりゴロンとひっくり返った。静かな部屋にテレビの音がひろがった。
ニャン太はテレビに顔を向けた。横で寝転んでいるタケシがじゃまだ。仕方がないから、のっそりとおき上がった。
そして、タケシのからだに乗っていったら、ようやくテレビが見えた。
「おいっ、いま、遊んでやれないんだよ」
と、うるさそうにタケシが言った。
(いやいや、そうじゃあないよ)
と、シッポでいい返したニャン太は、じっとテレビをながめていた。
テレビに映っているのは、ニャン太がはじめて見る奴だった。するどい眼つき、たくましいからだつき、どうどうと歩く姿。
こいつは何者だろうと思うと同時に、ただ者ではないとも思うニャン太だった。