大人の童話館

自作の創作童話やエッセイなどを投稿していきます。

間違えたユウレイ7 - 恐怖体験中

とたんに、ジィッと太郎をにらむユウレイ。

「あんたね。ユウレイって、怒らすと恐いのよ。ほんとだからね」

と、ユウレイが言う。

 

太郎をにらんだユウレイの顔が、太郎はほんとに恐いと思った。

「ごめんなさい」

なにせ相手はユウレイだ。この世の者ではない。

 

ほんとに怒らすと、えらいことにもなりかねない。

 

毎年、お盆の頃になると、

テレビでユウレイにとりつかれて大変な目にあった人の、

恐怖体験談なんかをやっている。

 

で、気を取り直してよく考えてみると、

太郎は、今まさに自分がその恐怖体験をしている

真っ最中だったと思い至った。

 

またまた蒲団で顔を半分かくした太郎。

金輪際、よけいなことはしゃべらないことだと、

恐怖体験中の心で思った。

 

「いいわ、あなた素直だから許してあげる」

「ユウレイのおねえさんは、よしおさんって人と、

恋人だったんだね」

と、太郎が言うと、ユウレイの顔つきが突然変わった。

 

横を向いたり下を向いたり、そわそわしている。

「なに、言っているのよ。やぁあね、この子ったら・・。

ませたこと言わないの」

照れくさそうにユウレイが顔を背ける。

 

死んでいるにもかかわらず、なぜか不思議にも、

顔がポッと赤くなっている。

 

「でもね。わたしが病気で死んで、よしおさん、

ものすごく悲しんでいたわ」

「ふーん、そうなんだ。ふん、ふん。」

と、恐怖体験中の太郎。

 

ちゃんと聞いていますよと言うように、何度もうなずいてみせた。

もっともユウレイの方は、そんなことはおかまいなしに、

うるませた瞳で、遠くを見つめるように話しを続けた。

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