大人の童話館

自作の創作童話やエッセイなどを投稿していきます。

3、立派な森のかわら版 - なんかヘンだ

 

奥さんにまともに相手にされないチュー助。

でも、チュー助のほうは、それどころじゃあ

なかった。

 

なんか変だと思いながら森のかわら版を放り

出し、家中、グルリグルリと大騒ぎで探し

はじめた。

 

「どこにいるのだい、ぼくの子どもたちは?」

と、チュー助。

でも、子どもなんてどこにもいなかった。

そりゃ、いるはずなかった。

 

奥さんは、子どもなんて生んでいなかった。

そりゃ、チュー助と一緒になってまだ新婚だ

し、いくら欲しくてもそう簡単じゃあない。

 

でも、しっかりと奥さんの気持ちは傷ついた。

 

「なにバカなこと言ってるんですか。あたし

が子どもを生んだかどうか、あなたが一番

よく知っているでしょう」

 

とうとう奥さんは怒ってしまった。

プンプンしている。

 

恐れをなしたチュー助は、なんか変だと思

いながら、ゆっくりと森のかわら版を持ち

上げた。

 

その陰で、だんだんと小さくなっていった。

 

カリカリしている奥さんをおいて、チュー助

は散歩に出た。

 

明るい森の道を歩いていった。歩きながら

チュー助は考えた。確かに子ネズミが十匹生ま

れたと、森のかわら版には書いてあったの

だが・・・。

 

「なんか変だなぁ? 」

頭をフリフリ、チュー助は一人つぶやいた。

 

顔を上げると、木々の間から抜けるような

青空が見える。

 

きれいな空だとチュー助は思った。

とたんに心を奪われ、うっとりながめた。

 

じつにのどかだ、さわやかだ。流れる雲も

ゆっくりしている。

 

「おぉーい」

と、だれかがチュー助を呼ぶ。

フクロウのじいさんだった。はて、病気

のはずだが・・・。

 

太い枝の上で、ニコニコと元気いっぱいだ。

これはおかしい。なんか変だ。

 

「フクロウのじいさん!」

チュー助は思い切り叫んだ。

「なっ、なんじゃ、大きな声をだして」

チュー助の声に驚いたフクロウのじい

さんは、グリグリと眼をまわした。

 

「フクロウのじいさん、寝てなきゃダメ

じゃないか」

「わしがか? そりゃまた、なんでじゃ?」

「だって、じいさんは病人なのだよ」

と、チュー助は真剣な眼差しで、フクロウ

のじいさんに言った。

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