間違えたユウレイ11 - いつかどこかで・・
太郎は、壁にぶつけた頭の後ろを手でなでながら、
痛い頭でユウレイの様子を見ていた。
やっぱり恐い。しかし、それだけでもない。
太郎は、なぜだかユウレイのおねえさんが、
まったくの他人には思えなくなっていたのだ。
それどころか、
なぜだかいつかどこかで会った人のように思えてならない。
それもごく親しかった人のように思えてならないのだった。
なぜ自分がそう思うのか、太郎はもちろん知らないし知りようもない。
ただ、なんとなく、いつかどこかで・・。
それもずっと前に、どこかで会った人なのでは、
と思われてきたのだった。
そんな気がしてきた太郎。
そんなことで、
ユウレイのおねえさんの役に立ってあげたいと思うようになったのだ。
「あのーっ。ボクさ、よしおさん探すの、手伝ってあげるよ・・」
「えっー、なんで? 迷惑かけたのに・・」
と、ユウレイ。顔がまだ笑っている。
「もっと近くまで行けば、よしおさんの輝きってやつ、
もっとよく見えるようになるんじゃないのかな」
「でも・・、でも・・。そんなぁ、・・悪いわよ」
と、ユウレイのお姉さんが困ったように言う。
「いいって。せっかく遠いところからやって来たんじゃいか。
この辺りを一緒に歩いてみようよ。
もしかして、すごく近くまで、来ているのかもしれないじゃないか」
ユウレイの戸惑ったような顔が太郎を見ている。
そんなユウレイのおねえさんを見つめ返した太郎。
やっぱりどこか懐かしいような、
やっぱり、いつかどこかで会った人のような、
そんな気がしてならない。
「夜も遅いしさ。お家の人だって、心配するよ」
と、ユウレイ。
「気にしない、気にしない。ぐっすり寝ているから平気だって」
と言いながら、太郎は、手早くパジャマの上から、
分厚いフリースの上着を頭からかぶってズボンをはくと、
首に襟巻きを巻いた。
太郎の部屋は二階にあった。
部屋を出るとすぐ下へ降りる階段があって、
降りきった正面にトイレがある。
そこを右へ曲がると玄関になる。
太郎は静かに階段を降りた。
太郎の後ろからユウレイが、
すっーと、音も立てずについてくる。
太郎は下駄箱から自分の長靴を出して履いていた。
すると、ガチャと音がして、トイレの扉が開いた。
パジャマ姿の太郎の父さんだった。
「おい、今ごろ、どこへ行くんだよ」
「雪だよ、父さん。雪を見に庭へ出るんだ」
太郎は、とっさに思いついたので言った。