間違えたユウレイ3 - お化けが出た~
蒲団をかぶったまま、ブルブルと震えている太郎。
「おっ、お化けだぁー。お化けが出たぁー」
と言ったつもりだが、とにかく恐くて、
ふるえるやら口は乾くやらで、ほとんど声にならない。
“恐がらないで”と言われても、やっぱり恐い。
太郎は、蒲団の中でしっかりと眼を閉じてふるえていた。
「えっ、なーに? お化けが出たって・・。やだ、よしおさん。お化けじゃないわよ、正しくはユウレイよ。あなたに会いに来たのよ。ずっと会いたかったわ、よしおさん・・」
ブルブル、ガタガタ、
蒲団をかぶってユウレイから身を隠し震えている太郎。
心の中では、お化けが出た~~と叫んでいた。
「わっ、わっ。ユウレイだー。ユウレイが出た・・。へっ? よしおさん? だれ?」
おっかなびっくり、太郎は半分だけ蒲団から顔を出した。
そーと、のぞき込むように、ユウレイに眼を向けた。
「あのぉ、よしおさんって、だれですか?」
もうとっくに泣きべそ顔の太郎は、
蚊の鳴くより小さな声で、ふるえながら言った。
「なにボソボソ言っているの、よしおさん。わたしよ、雪子よ」
「ボクは、そのぉー・・。太郎・・」
「よしおさんでしょう。やっと見つけたわ。わたしだってば、雪子よ、忘れちゃったの。あなたの彼女だった雪子よ」
「だからボク、ちがうって・・。太郎・・」
「なに言ってるのよ、よしおさん。わたし、あなたに会いたくて、
会いたくて・・。だから、こうやって・・。
それをお化けが出たって、なによっ。・・わかってよ、よしおさん。
雪子よ。もう一度だけでも、あなたに会いたくて。わたしこのままじゃ、死にきれない。わたしはもう、この世の者ではなくなってしまったけれど、でも、でも・・、あなたはやっぱり、わたしだけのよしおさんだわ」
「そんなこといったってー・・、ボクは太郎・・です・・」