大人の童話館

自作の創作童話やエッセイなどを投稿していきます。

6、迷い込んだ真っ白でキレイな文鳥 - すぐに怒りだすご主人



一平は勉強机の椅子に座り直していました。

すると、腕を組み、文鳥のシロを黙って見下

ろしていました。

「なんで、家出なんかしたの?」 

と、一平が聞くと、シロは静かに顔を上げて、

「聞いていただけますか?」

と、訴えかけるように言うのです。

 

「うん、いいよ。よかったら言ってみな」

シロの胸のあたりが、激しくふくらんだり、

へこんだりしています。

 

息づかいが荒くなっているのが、一平にもわ

かりました。

 

それでもシロは、呼吸を整えると、ようやくピンク色

のくちばしを動かしました。

 

「じつは、ケンちゃんが・・。ケンちゃんていうのは、

わたしのご主人ですけど、すぐに怒りだすのです」 

「なんで、また」

 

「ケンちゃん、わたしに芸をさせようとするんです」

「ゲイだって!」

 

「はい、つまり、お手とかお座りとか、

輪っかをくぐるとか、ケンちゃんが飛ばした輪ゴム

を拾ってくるとか、いうやつです」

文鳥のお前にかい?」

 

「そうですよ。わたしだってケンちゃんが大好

きなんです。仲良くしたいと思っているんです。

だから、ケンちゃんが喜ぶならと、がまんしているんです」

 

シロの話を聞いて、ポカーンと口を開けている一平。

その顔を見上げると、シロは続けました。

 

「でも、ケンちゃん、すぐに怒りだすのです。

わたしがちょっとでも失敗すると・・すぐに・・」

と言うと、涙ぐむシロ。

 

一平はそんなシロに向かって、

「うん、うん。大変だっったね」

と、首を縦に振りながらシロの話に聞き入

っていました。

 

「わたし、ケンちゃんの怒った顔を見るのが、

つらくて、つらくて。それでついつい、ケンちゃん

ゴハンを食べているスキを狙って、家出しちゃったんです」 

 

シロが悲しそうな顔をしています。

よほどつらかったのか、くちばしを少しだけ開いたまま、

黒くて丸い二つの目に、またまたなみだを浮かべていました。

 

時折、そのくちばしを閉じるシロ。と、顔をしゃくり

あげるようにして、鼻をすすっているのでした。

 

「わたし、あなたに聞きたいのですが、人間はどうして、

すぐに怒りだすのでしょうか?」

「えっ、えーと。それは、つまり・・」

 

一平はどう答えていいのか分からず、仕方がなく

口ごもっていました。

 

すると、シロが細い二本の足で、机の上をピョンピョン

と飛びはねるようにして、一平に近づいてくるのでした。

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