大人の童話館

自作の創作童話やエッセイなどを投稿していきます。

9、迷い込んだ真っ白でキレイな文鳥 - 心配しているペットたち

 

文鳥と犬とネコが、額をよせ合って相談しているという。

課題は、“じょうずに人間に飼われるためには”とか、

“いかに人間とつき合うか”などだそうです。

 

一平はビックリしました。文鳥や犬やネコたちが、

そんなことを話し合っているなんて思ってもみま

せんでしたから。

 

目を丸くして口を開けっ放しの一平。そこで、

「それで、そのミーチェは、何と言っているの?」

と、聞いてみた。

 

「ミーチェは言っています。自分たちはそれぞれ、

ご主人たちと一つ屋根の下に住んでいるからには、

死ぬのも生きるのもいつも一緒だって」

「へーぇ、ネコがねぇー」

 

「はい、だから、どんなことがあっても、そばにい

てやらなくてはいけないって。それが、自分たち飼

い猫の心意気なんだそうです」

 

それを聞いて一平はちょっと感動しました。

ネコは、もっと自分勝手で、素っ気ない生き物

とばかり思っていましたから。

 

シロは、まっすぐに向けていた顔を右に左に

ヒョイヒョイと動かしたかと思うと、下を向き、

それからそぉーと、一平を見上げていました。

 

「ミーチェは・・、ご主人たち、つまり人間の

行く末が、ものすごく心配なんですよ」

「心配って、ネコがかい・・。なんで?」

一平は不思議そうに聞き返しました。

 

「つまり、そのぉ・・。あなたたち人間を見ていると、

心配で仕方がないそうです」

またまた、信じられないという顔をした一平の口が

ポカン開く。

 

「ネコが心配してるって、何を?」

右手で頭をボリボリかくと、一平は顔をズズッとシロ

に近づけました。

 

シロはピンク色のくちばしを、ヒクヒク動かし、

丸い頭を右に左に動かすと、

「あのー・・。あなたたちはいつも、ゴロゴロと

寝転んでばかりいるのですか」

と、一平に聞くのです。

「へっ、なんで?」

 

「えっ、えーと、人間は、ぜんぜんエサをとろうと

しないんですって。わたしは、鳥カゴにいることが

多いもので、知りませんでしたけど・・。あなた、

どうですか」

 

「うっ、うーん。エサは、まあ、自分で捕ったこと

ないなぁ。いつも、母さんがつくってくれるから・・」

「やっぱり、そうなんですかぁー」

 

シロは驚きの声をあげて、まるで、とんでもないとで

も言うように、シロのくちばしが大きく開いていました。

 

「ミーチェは、なんと言ってたんだ?」

「だから、彼は心配しているんです。人間はゴロゴロして

ばかりで、ぜんぜんエサをとらないのですって」

 

一平は、“それはお前たちの誤解だよ”と言いかけましたが、

シロが大真面目に話しているので、ぐっと言葉を飲み込

みました。

 

「そりゃあ、わたしたちだって、人間からエサをも

らって生きているわけですけど、その人間たちは、

エサをとらずにどうやって、食べているんだろうって」

 

ピンク色のくちばしをパクパクさせながら、まるで

大事件だとでも言うように、文鳥のシロが困った

ような顔をしていました

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