間違えたユウレイ12 - 一緒に歩く二人?
寒そうな顔をした父さん、
「雪、まだ降ってるのか?」
と言う。
「うん、けっこう積もっているよ」
と、ボクが答える。
「そうか、どうりで冷えると思ったよ。
しかし寒いのに物好きだな、おまえ。母さんが知ったら、またツノ出すぞ」
「平気だよ。それに友だちと一緒だから」
「友だちって、だれか来てるのか?」
「ユウレイのおねえさんだよ。ここにいるのが見えない?」
ユウレイはあわてて、ペコリと丁寧におじぎした。
だが太郎の父さんには見えていないようである。
ユウレイが顔の前で右手を振って、
ダメダメと太郎に合図をした。
「おまえ、父親をからかってるのか」
「ハハッ、ごめん」
「バカ、便所へ行くのが恐くなるだろ」
と言うと、太郎の父さんは頭をかきながら、寝室へもどっていった。
太郎とユウレイは外へ出て一緒に歩く。
まっ黒な空から大粒の雪が、サラサラ、サラサラと
音も無く落ちてくる。
雪の降る町を一緒に歩く太郎とユウレイ。
積もった雪に太郎の足あとだけがつく。
太郎は、生まれ育った故郷の北海道を思い出していた。
北海道の寒さは、こんなものじゃあない。
むこうでは、“しばれる”というが、まさに何もかもが、
ガチンガチンに凍りついてしまう。
ただたんに寒いなんてものではない。
それでも、去年こちらに引っ越して来てからというもの、
こちらの気候になれてきたせいもあって、
こんな日はやっぱり寒くてしかたない。
太郎とユウレイは、しばらくの間、あちこちを歩きまわった。
でも、よしおさんの輝きは、なかなか見つからなかった。
「どう?」
と、太郎が顔を持ち上げてユウレイに聞く。
一緒に歩くユウレイ、すまなそうな顔をして首を横にふる。
二人はそんなことを、何度か繰り返していた。
「わるいわね」
と、ユウレイは心配そうな顔をして、太郎の肩に手をかけながら言った。
「おねえさん、寒くないの?」
「わたし? だって、ユウレイよ」
「そうだった。ユウレイだった」
と、思い出したように太郎が言う。