大人の童話館

自作の創作童話やエッセイなどを投稿していきます。

間違えたユウレイ10 - 置き忘れた体

しんみりしているユウレイを見て太郎は、

「ボクでごめんね。・・ボクのせいじゃあないけど」

と、太郎なりに、やさしく言ってみた。

 

「そうね。わたし、もう一度がんばって、よしおさんを探してみるわ。

あなたには迷惑かけたわ。ごめんね。じゃあね」

と言うと、ユウレイは、ボワッと白く淡い輝きに包まれながら、

少しずつ消えていった。

 

「待って、おねえさん。待ってよ」

太郎はあわてて、消えていったユウレイを呼び止めた。

 

「なーに、太郎君」

と言いながら、ユウレイは胴体を置き忘れたものように、

あるいは全部出すのも面倒とばかりに、

顔だけを太郎の顔の真っ正面に出してきた。

 

太郎は、ギョッとしてのけぞった。

その拍子に頭を後ろの壁にぶつけた。ゴツンと音がした。

 

ユウレイの顔だけが、太郎の眼の前でフワフワと宙に浮かんでいる。

その顔がおかしそうに笑っている。

「なによー?」

と、またユウレイが言う。

 

今度は左手が出て来た。

ユウレイは、その手で自分の口を被うように隠しながら笑っている。

 

笑いながら、腕から肩、胸からお腹、そして右側の腕や手などが、

置き忘れたものが戻ってくるようにゆっくりと現れてきた。

ついに全体が現れてきた。

 

人間らしい姿にはなってきた。

ただし、腰から足にかけてはというと、やっぱり人間らしくない。

 

というのも、置き忘れたものがそのまんまになっている。

すなわち、ないのだ。

 

下へいくにしたがって、まるで空気に溶けんでしまっているかのように、

すうっーと消えてなくなっているのだ。

 

でもこっちは、とくに置き忘れたものというより、

最初からなかったのだと太郎は思い至った。

 

ちなみに、ユウレイの服装はというと、

テレビに出てくる着流しの浴衣のようなものとは、

ぜんぜん違っていた。

 

下半身は、なにせ下へいくにしたがって消えてしまってはいるが、

どうやら普通のスカートらしい。

 

上半身はブラウスらしきものを着ている。

だから、それだけ見ると普通の女の子と変わらない。

 

ただ違うのは足のほぼ半分がないのと、カラダ全体が白く淡く、

ボワッと輝いているところだけだ。

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