大人の童話館

自作の創作童話やエッセイなどを投稿していきます。

間違えたユウレイ9 - 命の輝きを追って

じっと太郎を見つめるユウレイ。下を向き、

「でもねー、やっぱり、そのー」

と、なぜか急にモジモジとしはじめた。

 

「おねえさん、ユウレイなんだから、ヒョイと会いにいけばいいのに」

「えっー、これからっー。だってもう夜も遅いしねー」

 

「あのぉー、ボクのところに来たのも、かなり遅かったと思うけど」

「だから、ごめんねって、言ってるでしょうに。

あらわたし、いま、言ったのかしら。じゃあ、ごめんね。かんべんしてね」

 

「いいよ。それより、よしおさんのお家、どこら辺なの」

「たぶん、この辺りだと思うのよ」

「思うのよって、知らないの」

 

「よしおさん、去年この町に引っ越してきたの。

北海道から。それはわかっているの。なぜっていうと、

ユウレイになってからはじめて気がついたのだけど、

その人の命の輝きが見えるのよ」

 

「その人の命の輝き? ふーん」

「そうよ、その人特有の命の輝きがあるのよ。それが、

見えるっていうか、感じるの。でね、そのよしおさんの命の輝きを、

ずっと追っていったら、なんでか、

あなたのところに来ちゃったってわけなのよ」

 

「なんでかね?」

太郎が腕を組んで、考えこむまねをする。

 

太郎も去年、一家で北海道からこの町に引っ越してきた。

同じように去年、同じ北海道の人がこっちに来ていたとは、

と太郎は思った。

 

「去年までは、確かに、よしおさんの命の輝きはあっちにあったはずよ。

それが、こっちに来たのもわかっていたのに・・」

「でも、間違っちゃったね」

 

「変ねえ。確かによしおさんのはずなのに。どこで間違えたのかしら」

いつの間にか太郎の勉強机のイスに座っているユウレイ。

机にほお杖をつくと、しげしげと太郎をながめていた。

 

「変ねえ、どこで間違えたのかしら」

と、またまたユウレイが言う。

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