大人の童話館

自作の創作童話やエッセイなどを投稿していきます。

7、迷い込んだ真っ白でキレイな文鳥 - 嫌っているのですか

 

ピョンピョンと跳ねながら、

一平に近づく文鳥のシロ。

 

「わたし、じつはそのことで、おとなりの犬の

クロに、相談にのってもらったんですよ」

「へっ、犬にかい?」

一平はビックリしました。

文鳥と飼い犬のクロとが、顔を突き合わせて相談する。

 

そんな光景を想像するだけで一平の頭は、

もう大混乱しそうでした。

 

「はい、クロは、じつにしっかりとした考えを

もった犬なんです」

「ふーん。犬がねぇ」

と、感心しながら、不思議そうな顔をする一平。

 

「犬のクロは、言っていました。どうやら人間たち

は、わたしたちを家来か召使ぐらいにしか思ってい

ないのじゃないかって。

ご主人がすぐに怒り出すのはそう思っているか

らじゃないかって。あなた、どうですか? 

やっぱり、そうお考えですか?」

「だって、違うの?」

 

「それは、ぜんぜん、違いますよー」

シロは、くちばしを大きく開けると、

丸い目をさらに丸くしていました。

 

「へーえ、そっ、そうなの、ごめん!」

一平はシロのとがめるような眼差しに、

思わずゴメンとあやまっていました。

 

それでもまだ、シロの黒くて丸い二つの目は、

じぃーと、一平をとらえて離しませんでした。

 

「ごめんね。お前たちが、そんなに辛い思い

をしてたなんて、知らなかったよ」

 

シロはゆっくりとくちばしを閉じて、

だらりとたれ下がった両方のつばさを、

ブルブルとふるわせていました。

 

「わたしたちは、人間を友達だと思ってい

るんです。友達だから喜ばそうとしている

のに、怒るなんてひどいですよ」

 

「そーだよな。サービスしているのに

怒られちゃ、たまんないよな。うん、うん」

と、何度も頷く一平。

 

「それなのに、それなのに・・。もしかしたら、

人間はわたしたちを嫌っているんじゃないで

しょうか。あなた、どう思います」

 

「いいや、嫌っているなんて、そんなこと

絶対にないよ。たぶん、母さんがぼくを

怒るのと一緒なんじゃないかな」

「そうでしょうか?」

 

「そうだとも。そうに決まっているよ。

だって、母さんがボクを嫌っているわけ

ないじゃないか。きっと、好きでしかた

ないから、怒るんだ」

 

その時一平は、なんとなくシロの顔が

ニコリと笑ったような気がしました。

 

「そうでしょうか。わたしを嫌ってい

るわけではないのでしょうか」

と言うと、シロがチィチィチィと鳴いて

いました。

 

スッキリと澄んだ黒くて丸い二つの目が、

じっと、一平を見つめていました。

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スカパー!