2、迷い込んだ真っ白でキレイな文鳥 - キレイでカワイイ白い文鳥
ピンク色したクチバシをほんの少し開けたままの
文鳥の顔が、一平に向きました。
文鳥は、頭を傾けたまま、いつまでもじっと、
一平を見つめていました。
「なんだ、おかしや奴」
しばらくの間、一平と文鳥はお互いに見つめ
合っていました。
一平は、そぉーと文鳥に近づきました。
ゆっくり、右手を差し出しました。
文鳥がヒョイと、その手のひらに乗ってきました。
文鳥を見つめる一平の顔が、ニッコリと笑っていました。
「かわいいなー」
キレイでカワイイ白い文鳥をながめて、一平が言いました。
と、そんな一平にこたえるように、
白文鳥がチィチィチィと鳴きました。
「おまえ、どこから来たんだ。まい子になったのか?」
しかし、もう文鳥はこたえませんでした。
頭を右に左に傾けながら、黒くて丸い二つの目で、
キョロキョロと辺りを見回しているだけでした。
こんなにキレイな白文鳥です。
きっと誰かに飼われているのに違いありません。
「うちで飼えないかなー。母さん、うるさいからなー。
そうだ、それよりこいつ、なんか食べるかな」
と、思った一平は、文鳥を机の上において、
いそいで家の階段を下りていきました。
台所の冷蔵庫を開けるとトーストが目につきました。
一平は、あわてて一枚だけ抜き取ると、
小皿に水を入れて、
またゆっくりと階段を上がっていきました。
二階にある自分の部屋のドアを、
やっと通れるぐらいにそぉーと開けると、
一平は文鳥に顔を向けていました。
「大人しくしているな、よかった」
ホッと胸をなでおろした一平。ニッコリして、
文鳥のそばにトーストと水を入れた小皿をおい
てやりました。
でも、文鳥は、食べようとしないのです。
「お腹すいてないのかな?」
一平が用意したトーストと小皿の水に見向きもしない
文鳥は、そのまま机に上に、チョコンと座ったままでした。
時間が過ぎ、夜がとっぷり暮れていました。
一平は、晩ご飯もそこそこに、好きなテレビもほった
らかして、さっさと二階にある自分の部屋にもどりました。
「宿題やったの」
「お風呂、入んなさい」
「ぐずぐずしないで、さっさとしなさいよ」
いつもの口うるさい母さんの声が、下から聞えてきます。
「うん、うん」
とだけ返事をしますが、その実、
一平の耳にはぜんぜん入りません。