2、黒ネコニャン太の物語り 百獣の王ライオンがニャン太の心に・
(こいつ、なに者だろう)
タケシの手がニャン太をつかまえた。グイッと抱きよせた。ニャン太は、面倒なのでされるままになっていた。そしたらちょうどテレビの前に顔がきた。
(うまいうまい)
からだの自由は奪われてしまった。でも、心は自由だ。ニャン太の顔がテレビに向かって突き出していた。
「なぁ、おい」
タケシが、ニッと笑った。
「おまえのシンセキが出てるぞ」
(なんだって!)
驚いたニャン太。
眼をぱちくりさせて、もう一度よーく、テレビを見つめた。
「こいつな、百獣の王ライオンっていって、動物の中で一番強いんだぞ」
(こっ、こいつが、百獣の王ライオンって奴かぁ!たしかに、強そうな奴だ!)
「本当はおまえだって、きっとすっごく強いんだぞ。だって百獣の王ライオンのシンセキだからなぁ」
タケシがニャン太の背中をなでる。と、軽く二三度、ポンポンと頭を叩いた。ニャン太の顔が上下に揺れた。
それでも、眼だけは、テレビから、いや百獣の王から離れなかった。
(うーん、そうだったのか!)
少しずつ高まってきた胸の鼓動が、ついに頂点にたっした。自慢のヒゲがピクピクふるえる。のどもゴロゴロ鳴りだした。
うれしい気持ちは押さえきれない。百獣の王ライオンとのテレビでの対面に、ニャン太のひとみがキラキラとかがやいていた。