大人の童話館

自作の創作童話やエッセイなどを投稿していきます。

2、立派な森のかわら版 - 森のかわら版

 

いろんな注意までちゃんとしてくれる森の

かわら版。

 

しかも、それだけじゃあなかった。

森のかわら版は、いたって親切だった。

 

なぜかというと、こちらが考えること

まで、

森のかわら版はちゃんと教えてくれた。

 

怒ることも笑うことも、悲しむこと

だって、

森のかわら版は必ず教えてくれるのだ。

 

怒るべきだと森のかわら版に書いてあ

るのは、きっとそうあるべきだからで、

笑うのだって悲しむのだって、やっぱ

りそうだ。

 

チュー助たちはなんにも考えなくて

よかった。

そんなことは全部、権威ある、立派な、

森のかわら版が教えてくれるからだ。

 

森のかわら版はいつも正しい。

それが森のかわら版の役割であり使命

だからだ。

間違ったことなんか書くはずがない。

 

チュー助は、そう思っていた。森の

仲間たちもそう思っていた。

 

だからみんな熱心に、森のかわら版を読

んでいた。

 

チュー助は、ある記事に眼をつけた。

なんと、自分のことが書いてある。

チュー助の顔が、ますます真剣になった。

驚いたことに、チュー助の奥さんがカワ

イイ子ネズミを十匹も生んだ、と書いて

あるではないか。

 

これには、さすがのチュー助もびっく

りした。

だって、自分のまったく知らないことだ

ったからだ。

 

それに、子ネズミを十匹も生んだ奥さん

が、明るい笑顔で元気いっぱいに、朝ご

はんの支度をしている。

 

これはおかしい、奥さんはもっと弱ってい

なければいけない。

 

「おっ、おいっ! おいっ!」

 

ブルブルと森のかわら版を持つ手が

ふるえた。

「はい、はい。もうすぐ、ご飯よ」

大慌てに慌てたチュー助をよそに、

返ってくる奥さんの返事は、いたって

明るい。

 

そんな奥さんを、喜びと不安の入り

まじった顔をしたチュー助が、まじま

じと見つめた。

「おまえ、いつ、子ども生んだのだい?」

「えっ、なんですって!」

 

「子どもだよ、子ども! おまえが

子どもを生んだなんて、ぼくはぜんぜん知

らなかった」

奥さんは、チュー助がからかっている

のだろうと思って、相手にしなかった。

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