黒ネコニャン太の物語11 - 緊張するニャン太
ニャン太は、ジワリジワリと犬のシロに近づいて行った。と、シロの耳がピクッと少し動いた。ギクリとするニャン太。
全身に緊張がはしった。自分の心臓のドキドキが自分で聞こえる。自慢のヒゲがビリビリする。下を向いたままのシッポがピーンと張っている。大きく見開いた眼も真ん丸だ。からだが石になったように動けない。まるで、金縛りにあったみたいだ。
ついに、シロが眼を開けた。
「ウゥーッ、ウゥーッ」
と、ニャン太をにらんでいる。
(おっ、おまえなんか、平気さ)
どうにかふんばったニャン太。だが、
「ワンワンワン! ワンワンワン!」
と、シロが吠えだしたときは、もうダメだった。
からだ中が小刻みに震える。破裂しそうな心臓が大騒ぎしている。四本の足も、ガタガタいって使いものにならない。知らないうちにシッポが股の間に隠れてしまった。まったく困った。情けないことになった。
(こっ、恐くなんかないぞ・・・。だっ、だって、ボクは、ライオンの・・・)
と、自分にいい聞かせたとき、すでにニャン太は、もとのネコだった。
カースケの前では、確かにニャン太はライオンだった。なにせカースケは吠えないし恐い顔もしない。どちらかといえば、ニャン太のほうが、少しは強いかもしれない。
だから安心してライオンにもなれた。けれども、シロは、カースケじゃあなかった。