1、七色の虹と子ぎつねタプちゃん - 七色の虹が見える
ここは静かな森の中。
ついさっきまで、激しく降っていた雨が上がり、
お日さまが顔を出していました。
森は明るい日ざしでいっぱいになっていまいた。
いままで木々の間にかくれていた小鳥たちが顔を出しました。
小鳥たちは雨が上がったことを確かめるように、
キョロキョロと辺りを見まわすと、
チッチッチッとうれしそうに鳴いていました。
まだ濡れている木々の間から、明るい日差しがもれて、
キラキラ、キラキラと輝いています。
葉っぱの先からしずくが垂れて、ポタリポタリと落ちています。
その水滴に日の光があたってキラッと輝いています。
そして空には、赤、青、黄色、だいだい色など
大きな七色の虹が出ているのでした。
「きれいだなぁ~」
子ギツネのタプちゃんは、お空に浮かぶ七色の虹を見上げていました。
「お母さん、あれ、な~に?」
「あれは虹っていうのよ。きれいでしょう」
お母さんキツネは、ニコニコしながら答えました。
タプちゃんは、しばらくの間、
じっとお空の七色の虹を見上げていました。
『そうだ、あの七色の虹を取りに行こう!』
ワクワク、ドキドキ。そう思うと、じっとしていられません。
ヒョイと立ち上がると、
タプちゃんはお母さんギツネに振り返って言いました。
「ぼく、あの虹を取ってくる!」
言い終わらないうちに、タプちゃんはもう、
元気いっぱいに走り出しています。
後ろでお母さんギツネがなにか云っています。
けれども、タプちゃんの耳にはもう届きませんでした。
タプちゃんは行ってしまいました。
お母さんギツネが困った顔をしています。
タプちゃんが心配で、心配でしかたありません。
だからこっそりと、後ろから追いかけていくことにしました。
タプちゃんは、お空の虹に向かって走っていました。
一生懸命になって走っていました。
それなのに、なぜか少しも虹に近づかないのです。
「へんだな~~? おかしいな~?」