大人の童話館

自作の創作童話やエッセイなどを投稿していきます。

5、迷い込んだ真っ白でキレイな文鳥 - 寂しそうに見える



じっとシロを見つめる一平。

家出してきたと聞いて、

「えーっ、家出だって。文鳥のお前が・・」 

と、驚きながら、目を見開き、真ん丸にしてい

ました。

 

顔をつきだし、ますます、しげしげと、

文鳥のシロをながめていました。

 

夜になってから風が出てきました。

ビォォー、ビォォーと、激しく吹いていて、

一平の部屋の窓ガラスを、グタン、グタン

とゆらしていました。

 

小さな白い文鳥が家出してきたと聞いて、

呆然としていた一平。

 

ようやく気を取り直すと椅子から立ち上がり、

少しだけ窓を開けて夜空を見上げました。

と、真っ黒い雲が足早に動いているのがわか

りました。

 

シロは、トーストの上にチョコンと座って、

やわらかそうな細い首をだらりとたらしてい

ました。

 

なぜか、寂しそうに見える左右の白いつばさ

が震えていました。

 

「おい、トースト、食べないのか?」

一平は、できるだけやさしい声で、

シロに話しかけました。

 

「えっ、なんですか?」

「トーストだよ。おまえ、下に敷いているだろ。

それ、座布団じゃないよ」

「えーっ、これ食べものだったのですか?」

 

ピンク色のくちばしを大きく開くと、また閉じて、

シロはそのくちばしで、ツツンツツンとトースト

を突いていました。

 

そのしぐさも一平には、なんとなく

寂しそうに見えるのでした。

 

「うん。まあね」

「そうだったのですか。冷や冷やして、

気持ちよかったもので。ごめんなさい」

シロはトーストから降りると、細い二本の

足を机に立てて、白い羽をパサパサと動

かしていました。

 

「これ、けっこう旨いぞ」

「ありがとう。でも今、お腹すいてませんから。

それに、わたしには大き過ぎますよ」

 

「ちぎってやれば、よかったな」

一平が、ニッコリしながらそう言うと、

シロは、黒くて丸い二つの目で、じっと一平の

顔を見つめていました。

 

「あなたは、やさしい人ですね」

小刻みにピンク色のくちばしをふるわせながら、

シロの目がもう濡れていました。

 

寂しそうに見える細い首をだらりと垂らして、

またうつむいてしまうのでした。 

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