5、愛犬ポポの物語 - 面倒を見るのは・・
わがままイッパイに育ったポポは、勝手気ままな犬に育ってしまいました。僕たちは最初の子犬を死なしてしまったということが、心のわだかまりとなっていたのです。それが消えなかったボクたちは、ポポについてはちょっと用心深くなり過ぎていたのでしょう。
とくに姉の甘やかし方ときたら、傍で見ているボクからしても大変なもの。ポポのどんな悪戯も大目に見てニコニコしており、けっして叱ろうとしないのです。そんなことですから、ボクがポポを何かのことで叱ろうものなら大変でした。ボクのほうが逆に姉から叱られてしまうハメになってしまうのです。
そんなにポポが可愛いのなら、自分でも少しは面倒を見る仕草でも見せればいいのに、当時、ポポの面倒を見るのは全部ボク。肝心の姉はなんにもしないのです。“あたしは、忙しいから”とか何とか言って、エサやりから散歩、果てはグルーミングに至るまで、実際にやっていたのはボクなのです・
そんなことでしたから、ポポの方だって、少しはボクに恩義を感じてもいい筈。でも、そこがポポの身勝手なところ。たとえ一緒に遊んでいる時でも、頭を撫でてやっている時でも、姉が姿を現すと、あるいは姉が呼ぶと、さっさとボクを無視して行ってしまうのです。そんなことがしょっちゅうです。1度や2度ではありません。
“お前の面倒を見てるのは、ボクなんだぞ”と言っても、所詮、相手は犬です。クゥ~ン、クゥ~ンと鳴いてボクの顔を舐めまわすだけ。そういえばポポもメスでした。女というのは人でも犬でも、本来、身勝手なものなのでしょうか。
しかし、ポポのそんな行動は、犬としては当然であったのです。そして、ボクがその秘密を知り得たのは、ずっと後になってからでした。つまり、犬の社会認識は人のそれとは違うのです。これが人の世界であるならば、“よく面倒を見てくれてありがとう。大事なのはあなたです”となるところ。
でも、犬はそうではないのです。あくまでも、ポポにとってのリーダーは姉だということです。そして犬社会においては、あくまでもリーダーが偉いので、その人に従うというものでした。