大人の童話館

自作の創作童話やエッセイなどを投稿していきます。

間違えたユウレイ1-大粒の雪

雪の降るしずかな夜だった。

 

太郎はベッドに入ったまま、パッチリと目を開けていた。

なぜか今夜にかぎって、ぜんぜん眠れない。頭もすっきりとしている。

 

さっきからずっとそうだが、部屋の小さな電球が眼について離れない。

おかげでうっすらとだが、部屋の中が見渡せる。

 

「くっ、そぉー」

太郎は胸のあたりまで蒲団をさげた。

「おおっ、寒い!」

すぐに蒲団を頭まで引き上げる。

と、首だけ出して窓を見た。  

          

太郎は、掛け蒲団を蹴り上げるようにどかすと、

ひょいとベッドからおりた。

 

ブルンとからだをふるわせた。

パジャマの上から、

そばに放ってあった分厚いフリースの上着を頭からかぶった。

 

窓のカギをはずして、ゆっくりと、少しだけ開けて外を見た。

「わぁ!」

と、太郎は小さな声を上げながら、今度は窓をいっぱいに開けた。

 

大粒の雪が太郎の目の前で降っている。 

 

夕方ごろから降りはじめた雪は、一段と激しくなっていた。

次から次へとまっ黒な空から、大粒の雪が落ちてくるのだ。

太郎は寒いのもかまわずに外をながめていた。

 

太郎は去年、父さん母さん、それに太郎の三人の一家で、

北海道からこの某県に引っ越してきた。太郎が小学校三年の時だった。

 

北海道では、早くから雪が降って、

その雪は日本のどこよりもおそくまで残る。

 

ところが、ここ某県ってとこは、いつまでたっても雪が降らないのだ。

 

太郎の父親は、もともと某県の人だ。

父親に言わせると、

昔は、某県でもずいぶんと大粒の雪が降ったのだそうだが、

温暖化が進んで、だんだんと降らなくなってきたそうだ。

最近では、降っても、まず積もることはないとのことである。

 

その雪が降った。大粒の雪だ。

しかもまだまだ、ジャンジャン降っている。

かなり積もるだろうことは、まず間違いない。

 

今、太郎は小学校四年になっているから、

この雪は、ほとんど一年ぶりと言っていい。

太郎はうれしくなった。生まれ育った北海道を思い出して懐かしくも思った。

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