2023-01-01から1年間の記事一覧
大きな木の下に小さな家があった。ネズミの夫婦が住んでいた。ネズミの夫婦は働き者同士だった。中でも奥さんは、まだ若いながら近所でも評判の働き者で、しかもなかなかの美人だった。そんなネズミの夫婦は、まだ新婚ほやほやだった。
ドン太は、空を飛んでみたいという夢を持っていた。でも、自分はカタツムリだから、ムリと諦めていた。夢は夢であり、憧れはとどかないものとだとも思う。だから、チョウ子の白い羽がうらやましくて仕方なかった。
辺りはお日様がいっぱいだった。だけど、雨は一晩中降った。おかげで、花も葉っぱも、まだぐっしょりと濡れている。葉っぱの先についた雨のしずくが、キラキラとお日様をはね返す。
カタツムリと黒アリの二匹。互いに火花を散らしていたが、やがて別れた。
のろまのドン太はカタツムリ 。明るい森の道で黒アリとであい、罵り合う。
ピンク色のクチバシをパクパクと動かせながら、 一生懸命に話しかける白い文鳥。真剣な眼差しで 訴えかけるように、 「本当に自分の幸せを願うなら、まずはみんなの 幸せを願うべきじゃないでしょうか・・」 と、言います。 「うん、うん。そうだね」 と、眠…
シロは、高ぶる気持ちを落ち着けると、 「・・あなた、ご主人たちは感謝するど ころか、なぜかすごく怒って、ミーチェを 追いかけ回すんですって。ミーチェは、 言っていました。 人間はどうして、こうも分からず屋なんだ ろうって。わたし、ミーチェがかわ…
父さんが働いているから大丈夫だよと言 いたかった一平。 しかし、文鳥のシロの勢いに気圧されて、 黙って聞いていました。 シロが真剣な顔をして、 「食べ物がなくなってしまったら、人間たちはどうす るんだろうって。だって、いくら人間だって食べな りゃ…
文鳥と犬とネコが、額をよせ合って相談しているという。 課題は、“じょうずに人間に飼われるためには”とか、 “いかに人間とつき合うか”などだそうです。 一平はビックリしました。文鳥や犬やネコたちが、 そんなことを話し合っているなんて思ってもみま せん…
ピンク色のくちばしを震わせながら、 一平を見つめる文鳥のシロ。 そんなシロに向かって、 「お前だって家族の一員なんだよ。 そんなお前を嫌うやつがあるかい」 と、言ってやりました。 「そうでしょうか」 「うん、そうだよ。そんなの決まっているじゃん」…
ピョンピョンと跳ねながら、 一平に近づく文鳥のシロ。 「わたし、じつはそのことで、おとなりの犬の クロに、相談にのってもらったんですよ」 「へっ、犬にかい?」 一平はビックリしました。 文鳥と飼い犬のクロとが、顔を突き合わせて相談する。 そんな光…
一平は勉強机の椅子に座り直していました。 すると、腕を組み、文鳥のシロを黙って見下 ろしていました。 「なんで、家出なんかしたの?」 と、一平が聞くと、シロは静かに顔を上げて、 「聞いていただけますか?」 と、訴えかけるように言うのです。 「うん…
じっとシロを見つめる一平。 家出してきたと聞いて、 「えーっ、家出だって。文鳥のお前が・・」 と、驚きながら、目を見開き、真ん丸にしてい ました。 顔をつきだし、ますます、しげしげと、 文鳥のシロをながめていました。 夜になってから風が出てきまし…
思いっきりあせった一平は、あんまりびっくりした ので、言葉が途切れて出てきませんでした。 でも、白文鳥のほうは落ち着いたもので、 「最近では、カラスさんだって、スズメさんだって、 みんな、よくしゃべりますよ」 と、よくあることだと言うように、 …
文鳥は、トーストの上にチョコンと座っていました。 まるで、ずっと前からそこにいたかのように、 落ち着きはらっていました。 部屋の明かりで、あらためて文鳥をよく見ると、 まっ白い羽がキラキラと輝いて、 とてもキレイでステキな文鳥でした。 「おいで…
ピンク色したクチバシをほんの少し開けたままの 文鳥の顔が、一平に向きました。 文鳥は、頭を傾けたまま、いつまでもじっと、 一平を見つめていました。 「なんだ、おかしや奴」 しばらくの間、一平と文鳥はお互いに見つめ 合っていました。 一平は、そぉー…
それは夏休みが終わってすぐの、 ある晴れた日の午後でした。 小学五年生の一平は、学校から帰ると、 二階にある自分のお部屋で寝転んでいました。 まだまだ、暑い日が続いていました。 開け放したお部屋の窓から、ミーン、ミーンと、 しつこいほど耳につく…
みんなが古新聞に乗って出かけるようになったために、 空の上がガヤガヤと大騒ぎになってきた。 それはもう、渋滞なんてもんじゃない。 みんながみんな空の上で大混雑していた。 ママのお買い物もパパの通勤にしても、 それはやっぱり同じだった。 その上、…
インドのタゴールは、こんな言葉を残しております。 「人間は孤立すると、自己を見失う。 すなわち人間は、広い人間関係のなかに、 自らのより大きく、より真実な自己を見出すのである」 人間は、どうあれたった一人では生きていけない生き物 であると同時に…
ぼくたちは家にある古新聞を大いに活用していた。 雨の日以外は、どこに行くにも、古新聞に乗って スーイと飛んで行くことができた。 どこに行っても、注目の的となれた。ちょっとした 有名人になった気分だった。 古新聞がこんなよいものとは思わなかった。…
すっご~い。片付けていた古新聞に乗って、ぼくは、 今、空を飛んでいる。 『知らなかった。そうか、古新聞って空を飛ぶものなんだ』 そう思って、ぼくは感心した。 こんな便利なもの捨てるなんてもったいない。 地上に下りて他の古新聞を見ると、なるほどみ…
ぼくを乗せて飛ぶという古新聞。そんなことってあるの? でも・・、ものは試しだ。 「新聞紙よ、飛べ。ぼくを乗せて空を飛べ」 ぼくは、大きな声で言った。 すると、ガサガサと音を立てて古新聞が震えた。 畳んでおいたものが勝手に開いた。 折り目がなくな…
秋晴れの日曜だった。 その日、ぼくはママから物置の片づけを仰せつかった。 でも、本当は友だちのところへ遊びに行くはずだったのだ。 「だって、前からの約束だったでしょう」 と、ママの顔が怖い。 ニヤニヤとメガネの向こうでパパが笑う。 まったく親と…
すずめの子と星の子は、すっかり打ち解けて仲良し になっていました。 すずめの子は巣から下の地面へと降りていき、 二人は仲良く遊んでいたのでした。 しばらくすると星の子が、 「さて、困ったぞ」 と、空を見上げてつぶやくのです。 「どうしたの?」 「…
翌朝、すずめの子は一人でお留守番をしていました。 と、空から、スー、ストンと何かが落ちてくるのでした。 「あぁ~~痛い、イテテェ~」 木の下から声がします。 すずめの子は巣から体を乗り出し、 声のする下の方をのぞいていました。 なんと、空から落…
大きな木の上にすずめの巣がありました。 巣では、お母さんすずめの横で子すずめが、 夜空を見上げていました。 星空のきれいな夜でした。 お星さまの一つ一つがキラキラと輝いていました。 すずめの子はいつまでも見上げていました。 「ぼうや、何を見てる…
翌朝、目をさました正太が、部屋の窓から外の景色を見ると、 どこもかしこも雪でまっ白でした。 目の前に広がる一面の銀世界。 寒いのも忘れて、正太の顔がニコニコと笑っていました。 正太は、ザク、ザクとレインシューズが雪を踏む足音を 聞きながら、学校…
じっと正太を見つめる雪ダルマのオバケ。 炭で描いたようなその目が少し吊り上がり、 やはり炭で描いたような丸い口がパクパク動くと、 正太に、 「いえいえ、わたし、いつもあなたたちをお空の 上から見ているのですよ。 確かに、あなた、雪がお望みでした…
ようやく、少しだけ落ち着きを見せてきた正太は、 「えっ、えっ、だって、オバケって冬に出ていいの? 夏に出るものと思っていたけど・・」 と、目を丸くしながら言うと、続いて、 「それにまっ昼間から出ていいの? 夜中って決まっているのじゃなかったの?…
驚いている正太を見つめながら、 「なにをおっしゃいますか、正太さん。 夢なんかではありませんよ」 と、宙に浮いた雪ダルマの声は落ち着いていました。 「だっ、だって。・・・それに、 どうしてボクの名前しっているの?」 「えっ、えーと、わたし、あな…