大人の童話館

自作の創作童話やエッセイなどを投稿していきます。

7、立派な森のかわら版 - かわら版の権威

    

立派な森のかわら版を、“ウソばっかり”と言うピョン子。チュー助は、わが耳を疑った。

 

「そんなことないですよ。あなたのことだって、喜ぶべきだって、ちゃんと書いてあるじゃないですか」

 

チュー助は困った。かわら版によると、ピョン子は幸せいっぱいのはずだ。

 

なのに悲しそうに泣いている。これは変だ。これでは、森のかわら版の権威にかかわる。これはおかしい。絶対におかしい。ピョン子は喜ぶべきなのだ。

 

バサバサと羽ばたく音がする。空から下りてきたのは、カラスのクログロおばさんだった。

 

「あらまっ、また泣いているのかい。もう、いいかげんにおしよ。おまえは幸せのはずじゃないか。喜ぶべきだって立派な森のかわら版に、そう書いてあるのだから」

 

「ピョン子さんは喜ぶべきなのに。それが、どうして泣いているのだろう?」

と、チュー助が口をはさんだ。

 

「わがままなのよ、この娘は! 喜ぶべきなのに、 “真実は別にあるの”、とかバカなこといって、あんなにも立派な森のかわら版を見ないのだから」

 

「なんだって!」

 チュー助はあきれた。

 

権威ある立派な森のかわら版を見ない者がいたなんて、信じられない。それに“真実は別にある”って、どういうことだろう。

 

立派な森のかわら版以外に、どこに真実があるというのだ。

 

こんなアホな娘は放っておくにかぎる。チュー助は、さっさとその場から離れていった。

 

翌日、例によってチュー助は、窓から差し込む明るい日ざしの中、りっぱな森のかわら版を開いた。

 

ピョン子は幸せいっぱいだ。フクロウじいさんの病気は回復にむかっている。

 

ポンポコ小学校の子ダヌキのター坊が、人間のおじいさんおばあさんに頭をなでられたので、とうとうアホになってしまったそうだ。

 

ふと、チュー助は思いだした。 

「おい、おい。うちの子どもたちは、どうしている?」

 

奥さんはお茶のしたくをしていたが、急にその手を止めた。ジロリとチュー助をにらんだ。

 

と、拳固をつくり、ポカリと一発、力まかせにチュー助の頭をなぐった。

 

ラクラしたチュー助が見たものは、いくつもの輝くお星様だった。

 

なんと! 明るい朝日の中で輝くお星様! これはめずらしい。痛い頭でチュー助は思った。

“そうだ。森のかわら版に投書しよう!” 

おしまい

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