大人の童話館

自作の創作童話やエッセイなどを投稿していきます。

黒ネコニャン太の物語9 - 心の中のライオン

 

 

ニャン太とカースケ、友達ではある。しかし、この二人の、いや一匹と一羽のどこまでもかみ合わない会話が続く。

 

「シンセキなんだよ。なっ、だからボクがライオンに似ていたって、おかしくないじゃないか」

「でっ、でもぉー・・・、だってぇー」

「でもぉーって、なんだい! だってぇーってなんだい!」

 

「ニャン太君は、りっぱなネコなんですから、なにもライオンのまねなんかすることないじゃないですか。それって、おかしくないですかぁー」 

「わからないカラスだなー」

またまたあきれ顔のニャン太。  

 

「いいかい、ネコとライオンはシ・ン・セ・キなんだよ。だから、ボクだってきっと、ものすごく強いのかもしれないじゃないか」

 

ニャン太の鼻息が荒い。カースケはあきれた。黒いくちばしが、ポカンと開いたまま動かなかった。こういう相手には、下手に逆らうべきでないと思った。

 

大きな翼を広げて舞い上がったカースケは、西の空へ飛んでいった。こういうネコとはかかわらないようにしようと思って、カーと一声、大きく鳴いた。

 

ひと休みした屋根の上で、ネコのニャン太はライオンになった。身体はネコだ。でも心はライオンだ。これ以上の満足はない。

 

ニャン太は元気よく屋根から下りた。そうして、力強く歩いていった。

 

そろそろ三丁目に近づいた。いよいよシロと対決だ。ニャン太は、ブルンと震えた。もちろん、武者震いだ。けっして恐くて震えたのじゃあない。

 

そこがいつもと違う。ライオンのシンセキだという自信がある。自信が力を生み、力がまた自信を生んだ。

 

のっしのっしと力強く歩いた。じっと正面を見つめる眼つきが鋭い。肩から腰にかけての筋肉が、静かに波打っている。

 

ピンと張ったヒゲから、ユラユラ揺れるシッポの先まで、勇気がいっぱいだ。

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黒ネコニャン太の物語8 – やっぱりネコはネコ

 

「でもやっぱり、ネコでしょう」

「わからないカラスだなー」

ニャン太が呆れた顔をする。

 

一方、カースケのほうは、ちんぷんかんぷんだった。不思議そうな顔が右に左にゆれていた。

 

「それなら、これじゃあどうだい?」

スクッと立ち上がったネコのニャン太。眼つき鋭く肩を怒らせ、歩いて見せた。

 

心の真ん中に強そうなライオンの姿があった。ニャン太の気分は、心は、もうすっかりライオンだった。

 

「ボクの姿、どう思う?」

「何か、嫌なことでもあったんですか?」

「どうして?」

 

「怒っているような歩き方ですね。ニャン太君にはにあいませんよ」

「そうかな? いつものボクより、ずっと強そうに見えないか」

「はいっ。でも、やっぱりちょっと、にあいませんよー・・・」

 

「カースケは、ライオンって、知らないのかい?」

「知ってますとも、ライオンぐらい」

「こんな感じで、歩いてたんだ」

 

ニャン太は、もう一度歩いて見せた。カースケの前を行ったり来たりした。顔を下げて前をにらむ。これから獲物を捕まえるような、敵に飛びかかろうとするような、そんな歩き方だった。

 

もちろん屋根の上には、獲物も敵もいなかった。

「でも、それってライオンでしょう。ニャン太君はネコじゃないですか」

 

「ネコとライオンは、シンセキなんだよ」

「そりゃまあ、そうですけど・・・」

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黒ネコニャン太の物語、7 - 心に宿るライオン

 

(シロがなんだい!)

心の中のライオンがガォォ~と吠えた。と、胸のモヤモヤをどこかに追いはらってしまった。やっぱりウキウキしてきた、ワクワクしてきた。

 

ニャン太の心にもう恐いものなんてなかった。

 

大満足しているニャン太の後ろで、バサバサと羽ばたく音がする。ニャン太はふり返った。晴れた冬の空から下りてきたのは、カラスのカースケだった。

 

ニャン太の友達だった。でも、あまり好きじゃあなかった。

「やあ、ごきげんよう

と、言いながら、カースケが屋根の上を歩いてくる。

 

二本の細い足が真っ黒なからだを支えて、かわるがわる器用に動く。ちょっと見ると、ニャン太のしのび足のようだ。その歩き方が、ニャン太にはなんとなくキザに見えた。

 

(相変わらず、キザなカラスだ)

カースケを見つめていたニャン太。きちんとすわり直すと、精一杯胸を張った。

「おい!おまえ、ボクが何者だと思う?」

 

「へっ?何ですって?」

カースケは丸い頭を傾けた。二つの黒い眼が、ぼんやりとニャン太を見つめ返す。

   

冷たい風がピューと吹いて屋根を襲った。ニャン太はブルッとからだを震わせた。寒くなった。サンマ雲がいくつか寄り合い形を変えた。

 

それがふくらんできて、とうとうお日様を隠してしまった。

「だから、何者だと思うのかってば?」

 

ビンビンとヒゲを震わせながら、ニャン太は大きな声で言った。

「ネコだと思いますが」

「だってボクはネコだよ。それじゃダメだ。よく見ろよ」

 

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6、黒猫ニャン太の物語 - ライオンの姿が頭に浮かぶ

 

(ライオンは何を食べるんだろう。魚なんか好きな? 一度、サンマでもくわえて、あいさつしたいもんだ)

 

勢いよくニャン太郎の心にライオンが戻ってきた。と、やっぱりうきうきしてくる、ともあれ嬉しさがこみ上げてくる。その時、ニャン太の頭にはライオンの姿がくっきりと頭に浮かんでいた。

 

力強くてしっかりした足腰。ガオォォーと吠える時の勇ましい顔つき。たてがみをなびかせて走る雄姿。どこをとっても、ほれぼれとする。恐いものなんか、なんにもないって感じだ。犬のシロなんか、問題じゃあない。

 

「おまえ、ライオンの親戚なんだぞ」

と、タケシはいった。その声が何度もニャン太郎の耳の奥でこだまする。

 

(そうだ! シ、ン、セ、キ、なんだ!)

そう思うと熱いものがこみ上げてくる。頭がポーとする。もし顔一面に生えている毛をそり落としたら、きっと真っ赤になっているのに違いない。顔に出さないのが、われらネコ族なんだが、かってに鼻が高くなる。

 

(ボクだって・・・・!)

ニャン太郎は立ち上がった。熱い血潮がかけめぐって、力がみなぎってくるようだ。

 

その時、ふと気がついた。

(ボクって、ライオンみたいだ)

こうして四本の足をしっかりと踏ん張って立っている姿が、われながらたくましい。ライオンにそっくりだ。

 

(だって、シンセキ、なんだからなぁー)

じつにいい気分だ。得意な顔が、すがすがしく輝いている。それに、なんとなくどっしりとして、重々しい強そうな自分を感じる。と、同時にワクワクした気持ちが湧いてくる。

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5、黒ネコニャン太の物語 - ふさいだ気持ち

 

突然頭に割り込んできた犬のシロ。おかげで、嫌な気持ちが胸の中で広がった。頭で考えたことが胸のあたりに移動して、熱い炎をすっかり消してしまった。

 

くさくさしてきた。いらいらしてきた。ふさいだ気持ちが心を覆う。でも、顔になんか出さないから、われらネコ族は偉い、とニャン太は思う。

 

それでもこのままいくと、シロのいる三丁目になる。だんだん足取りが重たくなってきた。とうとう道の上で止まってしまった。

 

ふさいだ気持ちが身体に居座って、うきうきした気分は家出していた。石ころみたいな重たいやつが、下っ腹あたりに居すわっている。

 

はれやかな気分はもどりそうにない。

 

ニャン太は、近くの家の屋根へとかけ上がった。逃げたのではない。そうではないけど、やっぱりシロが嫌だった。

 

屋根のてっぺんまで歩いていくと、ペタンとしゃがんだ。大きなあくびを一つした。ユラーリユラーリとシッポを振った。

 

ペロペロと毛づくろいを始めた。ネコとはいえど紳士のたしなみは心得ている。

 

見上げると青い空が広がっている。お日様が顔を出して、ポカポカしている。屋根の上はあったかだ。ふさいだ気持ちを癒すには最高だ。

 

ところどころに白い雲が退屈そうに浮かんでいる。正面の細長い雲がサンマに似ている、とニャン太は思った。

 

たちまち食いつきたくなった。口の中につばきがたまる。それがヨダレとなって流れ出てくる。ペロリと舌でぬぐった。大きく口を開けてみた。

 

けれどもやっぱり雲じゃあ食べられない。ニャン太はあきらめるしかなかった。

と、同時に、食い意地がふさいだ気持ちを追いやっていた。

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4、黒ネコニャン太の物語り - イヤな気持ちになった   

 

(シロのやつめ)

ニャン太の頭にシロの姿が浮かんだ。と、イヤな気持ちになった。

 

不思議なことに、いったん頭にイヤな気持ちが浮かぶと、それがしつこくこびり付いてくる。

 

こにイヤな気持ちは、なぜかどこまでも追いかけてきて、ニャン太を増々、イヤな気持ちにさせるのだ。

 

そのイヤな気持ちの原因は、シロ犬のシロである。シロが三丁目に引っ越してきたのは、まだごく最近のことらしい。

 

確かにちょっと前まで、ニャン太の縄張りには、犬なんてどこにもいなかったのだ。必ずさけて、安心できる所を縄張りにするからだ。

 

ところがいた。引っ越してきた。

もう、ちょっと前のことである。 

 

その日は運が悪かった。クサリが外れていたのか、ニャン太めがけて、シロが庭から飛び出してきたのだった。

 

ワンワンとけたたましいやつ。それが白犬のシロだった。

 

びっくりしたのなんのって。恐ろしいのなんのって。もちろん、あわてて逃げた。すばやくブロック屏に駆け上がった。

 

けれどもそのすぐ下では、追いかけてきたシロがワンワン吠えている。

しつこいやつだ。嫌なやつだ。

 

ブロック屏の上のニャン太は、フーッと、凄んで見せた。

 

でも、さすがに白犬のシロ。怯みもしなかった。それだけじゃあなかった。ますます恐い顔になった。

 

ここで会ったが百年目って顔に、恨みやつらみの憎しみさえあらわれている。

 

もちろんニャン太には、シロに憎まれる覚えなんかない。いつまでもこんな顔につき合っているなんて、まっぴらごめん。

 

そこはやっぱりネコだけに、ニャン太は、さっさと逃げていった。

 

それからというもの、黒ネコのニャン太は、白犬のシロが大きらいになった。

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3、黒ネコニャン太の物語り - ネコの散歩は大真面目

 

 

つぎの日、ニャン太はいつもの散歩道を歩いていた。ネコの散歩とはいっても、要は自分の縄張りの点検だ。

 

どこか知らないよそのネコが来ていないかどうか確かめる。クンクンあちこちかぎながら、縄張りを歩く。ネコの散歩は大真面目なのだ。

 

これをちゃんとやっておかないと、後々、面倒になることもある。うっかりする。よそのネコに縄張りを取られてしまうことだってある。だから、気楽なネコの散歩、なんていってはいけない。

 

なかなか大変で、ニャン太とはいえ、ネコの散歩とはいえ、けっこう大真面目なのだ。

「うん、よしよし」

 

ニャン太は、一本の電柱に鼻をあてながら、ひとりごとを言った。幸いにも今のところ、変わったニオイは発見しない。ホッとした。安心した。でも念のため、電柱に狭いオデコをこすりつけた。ますます安心した。

 

この安心が、つまりネコの散歩である。だから、大真面目にやる。自分のニオイがあると心がおちつく。そうしてまた、つぎを確かめに歩いていった。

 

(ライオンかぁ。動物の中で一番強いっていってたなぁー)

テレビのライオンが頭にうかんだ。

 

(ぼくの親戚なんだ)

と思ったら、散歩の途中だが急にシッポに力が入った。ちょっと照れくさいが、ともかく自信がわいてくる。うれしさと誇らしさが一緒になって、お腹の底からこみ上げてくる。

 

こんな気分はめったにない。まったくもって、久しぶり。けれどもこの散歩、そろそろ三町目に近いと気がついた。にわかに頭の中に黒い影が走った。歩道の途中には、犬のシロがいるのだった。

 

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